「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコムのオフィスへ。なぜソリッドなデザインにこだわったの?|グッドカンパニー研究 Vol.10
オフィスづくりに「フルスイング」した理由
横石:クラシコムの歩みを振り返ると、「北欧、暮らしの道具店」は実店舗を持たないということが1つのベースになっています。 オンラインで成立する事業だからこそ、リモートワークに対しても当然なわけですから、オフィスのような固定費がかかるものにはあまり重きを置かない方針なのかな…と思っていたのですが、今日ここに来てみたらそれを微塵も感じさせないぐらいにしっかり投資をしている。 そのあたりの青木さんの感覚に、とても興味があります。 青木:確かにコストパフォーマンスは大事ですよね。その点、ここは都心とは比較にならないくらい坪単価が手頃だし、そもそも売上自体が10年前と比べると10倍以上になっているので、会社の負担としてはそれほど重くないんですよ。 ただ、いいものをつくるという意味で「フルスイングしようぜ」という気持ちはありました。全体のコンセプトとしては、フィンランドのデザイナー、アルヴァ・アアルトのスタジオのイメージをまず共有して、造作よりも質感や照明、全体の配置のバランスに重きを置きました。 机やパーテーションのデザイン、壁の巾木の高さまで全部ディレクションしてつくりきったので、本当にイメージを形にできたという感覚があった。それがクラシコムにとってすごく重要だったんです。 というのも、僕らは洋服、家具、雑貨、コスメ、寝具といったプロダクトから、読み物、動画、映画といったコンテンツまで、この規模では異常なほどいろいろなものをつくってきました。つくれる機能をコレクションしていくというのが一つの勝ち筋だと思っているのですが、空間をつくるケイパビリティだけが今までなかったんですよ。 横石:なるほど。たしかに空間をイチからつくる機会というのはそんなに多くありませんよね。 青木:丸投げしてつくるだけだと何の学習にもならないけれど、つくる作業にとことんコミットした結果として、もはや空間はつくれるという手応えを感じています。 横石:クラシコムの新たな事業を生み出していくきっかけづくりとしても、このオフィス空間はつくられたのですね。従業員の皆さんの反応はいかがでしたか? 青木:元のオフィスも居心地の良いところだったので、社員のみんなは…「引っ越し面倒くさいな」くらいじゃないかなぁ(笑)。 ただ、以前は会議室がないに等しかったので、コンフィデンシャルなリモート会議が多い僕は、4年間ほぼ会社に来れなかったんです。今は僕と共同創業者の佐藤の執務室もできたし、安心してリモート会議ができます。 あと評判がいいのは、照明でしょうか。やっぱり照明がいいと、どの時間帯でも天気でも、機嫌よく元気に仕事ができる気がします。 「仕事をするテンションだけど、美しく心地の良いものって何だろう」ということを考えたくて、オフィスよりもギャラリーや美術館の照明を見に行ったりしましたね。