「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコムのオフィスへ。なぜソリッドなデザインにこだわったの?|グッドカンパニー研究 Vol.10
「ビルの一部をオフィスにできませんか?」と逆提案
横石 崇(以下、横石):青木さんとは、数年前に渋谷で開催された「プロデュースおじさん」というイベント以来の再会です。今日はぜひ、上場を経たクラシコムの新しいオフィスや働き方についてお伺いさせてください。 まず、コロナ禍を経て、これほどのすばらしいオフィスの新設を進められていたというのは驚きでした。 青木 耕平さん(以下、青木):この建物自体は本来、お店が入ることを想定して企画されたものなんです。「nonowa 国立 SOUTH」担当の方からクラシコムにお声掛けいただいた際も、はじめは「お店をやりませんか」というオファーでした。 でも、うちは実店舗を持たない方針なので、「もしかして、一部をオフィスとして借りられたりしませんか?」と逆提案したんです。 クラシコムが国立市でオフィスを構えたのは2008年頃で、最初は1DKのアパートの一室からのスタートでした。そこから5回ほど市内で引っ越しを重ね、2022年に上場。増えていく社員やセキュリティの面を考えると、新しいオフィスが必要だと感じていました。 ところが国立は文教地区なので、セキュリティがしっかりしたオフィスビルが少ないし、そもそも高い建物が建てられない。コロナ禍でオフィスに来られなくなったことで何とか延命していたけれど、ぼちぼち考えたいよね、というのがまず1つありました。 もう1つは自分が経営者として、ブランドをはじめ会社の中のあらゆるバランスを保つということを重要視しているんですね。たとえば、サービスはクオリティが高いけど、オフィスはボロいとか、コーポレートサイトがなんかぐちゃっとしているとか。 あるいは、お客様には高価なものを販売しているけれど、社員の報酬では買えないとか。そういうバランスの悪さを全部是正していくということを、一生やっていくのが経営かなと思っていて。 そんなときにちょうど「nonowa」の方からお声がけいただいて、新オフィスを構えることを真剣に考えはじめたんです。 オフィスの設計をお願いしたのは、デザイン事務所「SIGNAL Inc.(シグナル)」代表の徳田純一さん。実は、徳田さんと、共同創業者である妹(佐藤友子さん)が、18年前にストックホルムで出会っていたんですよ。 当時、徳田さんはスウェーデンの大学でデザインを学んでいて、クラシコムもはじまったばかりの頃です。2人とも交流は続いていたものの、実際に会うのは18年ぶりだったそうで、ここで一緒にオフィスがつくれたら、もう伏線回収でしかないよね、と(笑)。 ビルの企画段階から参加でき、愛着のある国立で、保安の設備が整ったオフィスを作ることができたのは、本当に運と縁のおかげだと思っています。