富岡西・担当記者回顧 勇気届けた雄姿 初舞台、強豪相手に堂々と /徳島
<第91回選抜高校野球> 第91回選抜高校野球大会に21世紀枠で出場した富岡西は26日、1回戦で強豪・東邦(愛知)と対戦した。選手たちは持ち味のノーサイン野球を駆使して強豪相手に立ち向かい、一時は同点に追いつく好ゲームを展開した。創部119年にして初めての甲子園だったが、気後れすることない堂々とした戦いぶり。最後まで一歩も引かずに戦った選手たちの姿に勇気づけられた。また、選手たちは試合後、「楽しめた」と話しながらも悔しさをにじませていた。夢舞台の貴重な経験を必ず夏に生かしてほしい。【岩本桜】 【熱闘センバツ全31試合の写真特集】 試合当日、甲子園球場に入ると観客の熱気が一気に押し寄せた。吹奏楽部の演奏や観客らの声援で、自分の声すらかき消される。「これだけ注目を浴びた中で選手たちは試合をするのか」。想像しただけで緊張し、鼓動が高鳴った。大観衆を前に圧倒されていないか。試合前に選手たちに声を掛けると意外にも「本当に楽しみです」「早く試合がしたい」と笑顔。大舞台を前に、緊張しながらも期待に胸を膨らませていた。 試合前、一塁側アルプス席はスクールカラーのえんじ色に染まっていた。富岡西の生徒たちやOB、地域住民であふれかえり、空席が見つからず階段付近で立って観戦する人もいた。チームの応援に駆け付けた約3000人の観客が見守る中、試合が始まった。試合はロースコアで進み、相手の大飛球を外野手が何度もさばき、浮橋幸太投手を援護した。六回表、木村頼知選手の適時打で同点に追いついた時には、アルプス席からはこの日一番の歓声が飛び交った。 しかしその後2点を追う展開となり、迎えた九回表。「ほら、行くで」とアルプス席の前方へ向かう富岡西のユニホームを着たOBたちの姿があった。なるべく近くで選手たちにエールを送りたい。そんな思いが彼らの背中から伝わってきた。しかしこの回出塁することはできず、ゲームセット。富岡西の春の挑戦は終わった。 初の夢舞台での一戦を終え、選手からは「最高に楽しかった」と晴れ晴れとした表情も見られた。しかし敗戦の悔しさは忘れず、山崎光希選手は「チームでの自分の役割を考えてまた取り組みたい」と意気込み、粟田翔瑛選手は「攻撃でもっと積極性を出せたら良かった」と振り返った。 初の大舞台でもおじけづくことなく戦い抜いたナインたち。「夏、再び甲子園の土を踏む」と決意を新たにし、球場を後にした。大会は「選手たちに大きな財産になった」と小川浩監督。チームはノーサイン野球に磨きをかけ、パワーアップして夏の舞台に戻ってくることだろう。敗戦を糧に一回り大きくなった選手たちが再び「富西旋風」を巻き起こしてくれると信じている。