震災10年目の節目にJ1ベガルタ仙台に復帰した手倉森監督の覚悟「タフに戦う今年の仙台をお見せする」
就任会見でこう語った手倉森監督は、2019シーズンからは長崎を率いたなかで常に古巣の動向も気にかけてきた。だからこそ、東日本大震災の節目の年で、さらには国難と位置づけられる新型コロナウイルス禍で古巣に導かれた、運命にも感じられるタイミングの積み重ねに感謝する。 オフには昨シーズンにチーム最多の9ゴールをあげたFW長沢駿(大分)をはじめ、ダブルボランチを組む試合が多かった椎橋慧也(柏レイソル)と浜崎拓磨(松本山雅FC)、スピードを武器とするFWジャーメイン良(横浜FC)らが移籍。チーム2位の5ゴールをあげたFWアレクサンドレ・ゲデス(ヴィトーリア)も、期限付き移籍期間の満了とともに退団した。 一方でキャプテンを務めたモザンビーク代表DFシマオ・マテ、バルセロナでプレーした経験をもつMFイサック・クエンカ、そして獅子奮迅のプレーを見せた元ポーランド代表GKヤクブ・スウォビィクが残留した外国籍選手に、横浜F・マリノスや浦和でプレーしたFWマルティノスも加わった。 日本人選手ではジュビロ磐田で名波浩の象徴だった「7番」を託されたMF上原力也、長崎で手倉森監督の薫陶を受けたMF氣田亮真、元日本代表のFW皆川佑介(横浜FC)らが加入した陣容に、広島の城福監督が最も警戒するとオンライン会見で明言した、策士であり、選手たちの士気を高める術に長けたモチベーターでもある手倉森監督が、さまざまな言葉を介して化学反応を加える。 「自分が復帰して新しいスタートだという意識のなかで、選手たちのやってやろうという意識や意欲にはものすごく満足しているし、伸びしろもあると感じている。ただ、いざ勝負になったときの勝負勘に関しては、昨年勝ち星が少なかったチームのなかで、しっかりと育めているか心配でもある」 仙台の現在地をこう明かした手倉森監督は、キャンプを行っている宮崎県内からオンライン会見に臨んでいた。このままキャンプを継続し、27日の開幕戦前日に広島入りする日程を組んでいる。 「やろうとしていることへの意識は高いが、勝負がかかったときに落とし込めない。ミーティングなどで改善していき、開幕戦ではタフに戦う、今年の仙台をお見せしたい」 前日までキャンプを継続するからこそ、チーム全員で共有する時間も増える。年間の試合数が「34」から「38」に増え、さらに17位以下の4チームが自動的にJ2へ降格する過酷なシーズンを戦い抜いていく上で、最も大切になると考える一体感をさらに高めながら27日の開幕戦へ臨む。 (文責・藤江直人/スポーツライター)