立民は改憲逆提案を 政権交代への道筋は? 「参院のドン」輿石氏に聞く【政界Web】
「政治とカネ」に区切りを
与党過半数割れに終わった10月の衆院選から1カ月半。この間、立憲民主党が目指した野党の大同団結と政権交代は実現しなかったが、石破政権は30年ぶりの少数与党の下で不安定な運営が続く。旧民主党で幹事長を務め「参院のドン」と呼ばれた輿石東・元参院副議長に、政権交代への道筋を聞いた。(時事通信政治部 大津寛子) ―衆院選で立民は98議席から148議席に伸ばした。結果をどう見たか。 野田佳彦代表が選挙前に目指すと言っていた自民、公明両党の過半数割れは実現した。しかし、50議席増えたのは敵失だ。自公政権の失敗で勝ち取れたと評価すべきだ。実力で勝ち取ったわけではないと、謙虚に、冷静に受け止めなければいけない。 ―確かに比例代表の獲得票は約7万票しか伸びなかった。 立民はどういう党なのか、何を目指しているのかが国民に分かりにくかった。立民は自公政権とはここが違うと国民、有権者に分かりやすく、心に届く言葉で訴えることが必要だ。年が明けると戦後80年。歴史の転換点にある。欧米で多くの国が不安定さを増し、中国、ロシア、北朝鮮という専制主義の国が独自の動きを強める中、日本の針路がはっきり見えないことに対する国民の不満や不安がある。「政治とカネ」の問題を突くだけでは限界がある。 ―政治とカネの問題をどう扱うべきか。 いいかげんに政治とカネの問題にはけじめをつけ、政治改革は政治改革特別委員会での議論に委ね、予算委員会では少子化や地球温暖化、外交・安全保障やエネルギーなど国の基本に関わる議論をすべきだ。党内でもそうした問題についてきちんと方向性を決め、他の野党に共闘を求めることだ。 ―党内の議論は不足しているか。 民主党は(所属議員の)本籍と現住所が違う政党だった。立民もそうだ。本籍は弁護士、医者、学校の先生…。労働組合からきた人もいれば、自民党からきた人もいる。そうしたさまざまな議員が集まる中、政権を取りにいくためには、外交・安保、エネルギー、憲法、経済などの問題について徹底的に党内で議論し、基本政策の方向性を決めなければいけない。「自公政権とはここが違うから私たちに任せてほしい」と示さなければいけない。分かりやすいキャッチコピーも必要だ。立民が目指す日本の針路、国家像、社会像を打ち出さないといけない。 ―どんな訴えが考えられるか。 例えば、私が目指しているのは「全ての人に出番と居場所のある幸せな社会」「みんな違って、みんないい社会」だ。立民は弱い人の立場に立って物事を考えていく政党だ。そういうことを分かりやすい言葉で伝えていくべきだ。私だったらもっと具体的に、「義務教育は無償とする」と定めた憲法26条の「義務」を削除し、大学まで無償化することを提案する。財源として消費税率の1%引き上げを国民にお願いする。 ―憲法改正の議論に正面から向き合うべきか。 そうだ。私の考えでは(天皇の地位と主権在民を規定した)憲法1条、(戦争放棄を定めた)9条1項、(個人の尊重を定めた)13条、(生存権を保障する)25条はどんな時代が来ても変えない。一方で(憲法7条を根拠に首相が衆院を解散する)7条解散を見直したり、53条に基づく臨時国会召集に期限を定めたりするなど、自公政権ではできない憲法改正を逆提案したらどうか。