【特集:ニッポンAIの明日】第1回 生成AIに立ち後れた日本の活路は―スタートアップを生み出す研究者、松尾豊さん
あるいは、既存のAIを使って日本の企業や役所の業務を効率化したり、新しい事業などにつなげていったりすることにも積極的に取り組むべきですが、そうした試みも増えています。また、AIについては国際的にもさまざまな懸念が持たれており、リスクに対応するフレームワークが必要です。
これについては、昨年の先進7カ国首脳会議(G7)においてAIの活用と規制に関する「広島AIプロセス」で日本が議論をリードしたことは大変大きな成果でしたし、「AIセーフティ・インスティテュート」という組織が、情報処理推進機構の下に今年2月に立ち上がりました。
珍しいことかもしれませんが、AIに対する今の国の意思決定はかなり速く、とても良い形で物事が進んでいます。状況は多少良くなっているとも思います。弱いなりにまともな手を着実に打っていくと、少しずつ戦況が良くなり、取れる選択肢が増え始めます。
ただ、大枠で負けているという状況は変わらないでしょう。努力を継続していく必要があります。繰り返しますが、すべては現状をきちんと認識することから始まるのです。
“■広島AIプロセス 2023年5月開催のG7広島サミットで生成AIの議論のために立ち上げられた枠組み。安心で信頼できる高度なAIシステムの普及を目的とした指針と行動規範からなる初の国際的政策枠組みで、同12月には「広島AIプロセス包括的政策枠組み」がG7首脳に承認された。”
“■AIセーフティ・インスティテュート(AISI) 2023年12月21日のAI戦略会議で岸田首相(当時)が設立を表明し、24年2月14日に発足。日本におけるAI安全性の中心的機関として、情報処理推進機構(IPA)の中に設置された。関係省庁・機関協力のもと、AIの安全性確保に取り組む海外機関とも連携しながら、安全性に関する評価手法や基準を検討している。”
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「特集:ニッポンAIの明日」では、生成AIをめぐる日本の現在地と将来展望について、有識者からの提言を掲載します。