ネコを死なせる「よろよろ病」を北米で初確認、野生のピューマで、アジアにも研究者が警鐘
どのように広まるのか
2023年の研究は、ヨーロッパにおけるルストレラウイルスの自然宿主として、モリアカネズミ(Apodemus sylvaticus)やキクビアカネズミ(Apodemus flavicollis)などのげっ歯類を特定している。 コロラド州では、シカシロアシマウス(Peromyscus maniculatus)やリスなどの小型哺乳類がウイルスを媒介している可能性がある。ウイルスはこれらの小型哺乳類に対して病原性をもたない可能性があり、フォックス氏は、小型哺乳類を捕獲して脳と脊髄を検査し、より詳しい情報を得たいと考えている。 ネコ(やピューマ)がルストレラウイルスに感染するきっかけとして最も考えやすいのは、ネズミを食べることだ。しかし、ウイルスが胃から脳へどのように移動するかなど、正確な感染メカニズムはわからない。 研究者たちは、ピューマや他の大型哺乳類がこの疾患に罹患した場合は、それ以上疾患を拡大させることはない「終末宿主」となると考えている。 コロラド州のピューマから検出されたルストレラウイルスは、ヨーロッパで見つかっているいくつかのウイルス株とは遺伝的に異なっている。この点は、今回のウイルスが最近になって北米大陸に入ってきたものではなく、しばらく前から気づかれることなく北米大陸にあった可能性を示唆している。 今のところ、人間のよろよろ病は報告されていない。しかし、さまざまな動物が罹患していることを考えると、動物から人間に感染する可能性はないとは言えない。 ドイツでは、ルッベンストロース氏らがウイルスの挙動の研究を続けている。ドイツの研究室を率いるフロリアン・プファフ氏は、「南米、アフリカ、アジアでこのウイルスの変異体が発見されないかどうか、目を光らせていなければなりません」と言う。「私は、ウイルスはもうそこにいて、見つける必要があると考えています」
文=Kylie Mohr/訳=三枝小夜子