日産の話題で持ちきりの今こそ落ち着いて24年ぶりに復活するホンダ「プレリュード」プロトタイプに試乗してみよう
■ 日産とホンダのニュースについて 2024年の自動車業界は、日産とホンダ(そして三菱)のニュースが年末に転がり込んできて幕を閉じました。 【画像】アメリカで2024年12月に発表された新型プレリュードのコンセプトモデルと初代プレリュード これに伴い、メディアではさまざまな予測や憶測が飛び交いましたが、共同記者会見でも述べられていたように、あくまでも「3社協業形態の検討に関する覚書を締結」したまでで、関係者にも聞いてみたところ、記者会見の時点では本当にまだ何も決まっていたなかったようです。各社から数名の社員が集まって「検討チーム」のようなものを作り、そこでさまざまな可能性を探っている段階です。つまり話し合いの結果次第では、すべてなかったことになる場合もあり得るわけで、予断を持たずに成り行きを見守りたいところです。 このニュースが、「社名が“ニッポン”になるかも」とか「日産とホンダの社員はうまくやっていけないのでは」など、あたかも日産とホンダがひとつの会社になるかのように巷では受け止められたようですが、おそらくそんなことにはならないでしょう。例えば、ダイハツはトヨタの完全子会社ですが、トヨタとダイハツは基本的に別々のブランドとしてやっています。海外を見れば、フォルクワーゲングループはフォルクスワーゲンをはじめ、ポルシェ、アウディ、ベントレー、ランボルギーニなどが協業していますし、ステランティスグループはフランスのプジョーやシトロエン、アメリカのジープ、イタリアのフィアットやアルファ・ロメオやマセラティ、ドイツのオペルなどが顔を連ねています。記者会見でも述べられていた「共同持株会社」の形態になるのであれば、フォルクスワーゲンやステランティスのように、個々のブランドはある程度の独立性を維持したままこれまで通り存続することになると思われます。
■ プレリュード 24年ぶりの復活 こんな日本をザワつかせたニュースが発表される直前、ホンダは今年発表予定の新型プレリュードのプロトタイプに試乗する機会を設けてくれて、自動車メディアがザワつきました。プレリュードは1980年代に一世風靡したホンダの2ドアクーペで、2001年に生産を終了していたため、発表されると実に24年ぶりの復活ということになります。 この試乗会では、2種類の新しいハイブリッド機構もお披露目されました。1.5Lと2Lのエンジンにふたつのモーターを組み合わせたもので、大幅な燃費の向上とコストダウンがウリとのこと。「2040年にEV/FCEVの販売比率100%を目指しますと発表したら、ホンダはエンジン開発を止めたと勘違いされてしまいまして、目標達成までまだ15年もあるわけですから、エンジン開発も引き続きちゃんと行っていきますというメッセージでもあります」とホンダ関係者が語っていた。 新型プレリュードにはこの新しいハイブリッド機構が搭載される予定ですが、同時に「Honda S+ Shift」と呼ばれる機能も採用されます。 これはいわゆる“疑似トランスミッション”で、実際にはトランスミッションを持たないものの、加速時には変速フィールと共に適度なシフトショック(のようなもの)を伴いながらエンジン回転数が徐々に上がっていき、減速時にはブリッピングをしながら回生ブレーキをエンジンブレーキに見立てて速度を落としたりもします。 いずれもほとんど違和感のないレベルで再現されていて、見事に騙されながら気持ちよくの運転できました。また、サスペンションはシビック・タイプRのそれをベースに開発したそうで、手応えのある素直なハンドリングと優れた乗り心地が印象的でした。 ホンダはこの日、次世代の中型プラットフォームも発表しました。もし、日産との協業が実現したら、こうしたプラットフォームやパワートレインを共有することは十分考えられますし、それ自体はすでにどこのメーカーでもやっていることでもあります。 ポイントは、同じプラットフォームとパワートレインを使っても、ホンダはホンダらしい、日産は日産らしいクルマを作れるかどうかです。ポルシェのカイエン、アウディのQ8、ランボルギーニのウルス、そしてベントレーのベンテイガは、いずれも中身がほとんど同じにもかかわらず、まったく異なる個性と乗り味を提供しています。ホンダと日産にも果たしてこうしたクルマ作りができるかどうか。そこを個人的にはもっとも注目しています。
渡辺 慎太郎