【衆議院総選挙】与党と野党の公約が酷似…「どこが勝っても大きな差はない」前代未聞の選挙戦は、日本の政治に何をもたらすか?
石破茂首相が衆議院を解散し、総選挙に突入しました。一般的に選挙になると与党と野党の対立が激しくなり、掲げる政策も乖離するものですが、今回はまるで様子が違っています。裏金問題の処理についてはともかく、経済政策に関しては自民党が議席を確保した場合でも、野党が躍進した場合でも、あるいは政権交代が実現した場合でも、大きな違いが生じない可能性が高まっています。 石破政権は基本的に岸田政権の政策を継承するとしており、子育て支援の拡充、賃上げ政策などを実施していく方針です。しかし岸田政権とは異なり、最低賃金を2020年代に1500円まで引き上げるなど、かなり思い切った目標を掲げたほか、総裁選の最中には給食費や高等教育の無償化なども主張しており、岸田政権よりも踏み込んだ形で中間層以下の支援に力を入れていることが分かります。 総選挙の公約には盛り込みませんでしたが、一連の政策を実施する財源として石破氏は富裕層に対する金融所得課税の強化や法人税の見直しなどを想定しています。基本的な方向性としては、負担能力のある個人や法人から税金を徴収し、中間層以下に所得を移転させる流れと考えて良いでしょう。 ではこうした与党の政策に対して、野党がどのような対案を出しているのかというと、非常に興味深い展開となっています。 最大野党の立憲民主党は、時期こそ明言していませんが、中小企業を支援しつつ、最低賃金1500円までの引き上げや教育無償化を主張しており、石破政権の方針とよく似ています。このほか連立を組む公明党はもちろんのこと、共産党や社民党も最低賃金1500円を公約として掲げたほか、維新、国民、れいわ、参政など各党もやはり賃上げを強く主張しています。少なくとも賃金や中間層以下の支援策という点において、与野党でほとんど違いはなくなったとみて良いでしょう。 こうした庶民の生活に焦点を当てた政策というのは、元来、野党が得意としてきたものですが、石破氏の総理就任に伴って自民党がリベラルにシフトし、一方で立憲民主党の代表が野田佳彦元首相に代わって同党が保守寄りになったことで、両者の違いが消滅した図式です。