【衆議院総選挙】与党と野党の公約が酷似…「どこが勝っても大きな差はない」前代未聞の選挙戦は、日本の政治に何をもたらすか?
国民の最大の関心事の一つであった裏金問題についても、自民党は従来の処分のみで済ませ、いわゆる裏金議員についてはすべて公認する方向性で調整を進めていました。しかし国民から批判が殺到したことから、石破政権は突如、方針転換を行い、裏金議員の一部は公認しない、あるいは公認しても比例への重複立候補は認めないなど、予想以上に厳しい措置に踏み切りました。 野党は基本的に裏金議員は全員非公認にすべきと主張しており、自民党は全員ではないという点でまだ隔たりがありますが、全員を公認するとしていた当初の段階から比較すると、与野党の違いはかなり薄くなったといってよいでしょう。 与野党の政策が近くなると、選挙結果次第では政界に大きな変化が生じる可能性があります。 先ほども説明したように、与党と野党の政策が近づいているということは、自民党がリベラル寄りになり、野党が保守寄りになったことを意味しています。一方で、自民党内部では保守的な傾向が強いグループと、石破政権の政策を支持する穏健派グループの対立が激しくなっています。また、立憲民主党内部でも、保守に舵を切った野田氏とリベラルなグループの対立が激しくなっています。 そうなってくると、政界全体の図式として、1.自民党における強固な保守派、2.自民党の穏健保守派と立憲民主党を中心とする野党の保守派、3.野党における強固なリベラル派、という3つのグループが形成されることになります。 政治ジャーナリストの一部からは、今回の選挙結果次第では、大規模な政界再編が発生するのではないかとの見立ても出てきており、今後の展開が予想しづらくなっています。 私たちは選挙に行くにあたって、選挙区の候補者の人物像について判断するのはもちろんですが、どの政党がいくつ議席を獲得するのかで、政界全体の動きが大きく変わる点についても忘れてはならないでしょう。人物評価に加え、その政党がどういう方向性を目指しているのか、複合的に考えた上で票を入れるという知恵が必要となるかもしれません。
加谷 珪一