応募倍率10倍の運送会社が貫く「マメな発信」 若者を引き付けた働き方改革とイメージ戦略
離職率は5%まで減少
2024年4月から、トラック運転手らの時間外労働にも年960時間の上限が適用されました。輸送力不足が懸念されることから「物流の2024年問題」と呼ばれています。 川北さんは2009年から月給制を導入し、夜間は走らず残業時間を短くするなどの改革に着手してきました。2021年には勤怠もスマートフォンで管理しています。 「今の若い人はボランティアや社会課題に興味があり、プライベートが重要で残業が困る人も多い。そんな人たちが気持ちよく働いてもらえれば、物流危機はなくなります」 引越休暇、記念日休暇、月2回の出張整体など、ユニークな制度がそろいます。男性の育児休暇取得率100%も実現しました。 社員が休んだ時のカバー体制も組んでいます。例えば、大型トラックの担当者は、どの大型車にも乗れるようにしているそうです。配車予定も社員の休暇に合わせています。「その人しかできない仕事を作ってしまうと、穴埋めが必要になります。誰も困らない体制を作ることが重要です」 IT化や働き方改革、SNSなどの発信力は、数字にも表れています。 売り上げは2019年ごろから持ち直し、2023年度は3億5千万円、2024年度は4億円程度の見込みです。採用倍率は10倍にものぼり、東京、北九州、大阪、奈良、京都などから引っ越してきた社員もいます。10-20代の社員が7割を占め、一時は65%だった離職率も、2024年は5%まで下がりました。 川北さんは「うちはすでに物流2024年問題は解決しています。業界全体が変わるべき時だと感じます」と胸を張ります。
物流を「かっこいいプロ集団」へ
カワキタエクスプレスの倉庫では、休憩中の社員が談笑する姿がありました。 2児の母でもある廣森凛華さん(25)は「高校でパンフレットを見て何となく入り、最初は現場で働きました。産休・育休後に戻り、今は事務をしています。若くて活気があり、居たいと思える職場です」と話します。 ドライバーの岡本幸輝さん(24)は、TikTokを見て「楽しそうやな」と応募しました。「プライベートは尊重してくれますし、運転も楽しいです」 川北さんは「運送業は差別化が難しく、1時間かかる道を10分で行けるといった魔法みたいなことはできません。だから人がすべてなんです」と強調します。 「思いやりがあり親切で、反省でき成長できる。そういう人と仕事をしたい。従業員が夕方、楽しくワイワイと帰ってきてくれるのがうれしいです」 「トラックドライバーは危険と背中合わせで、気を抜いたら命にかかわります。経済活動を支える仕事にもかかわらず、簡単と思われミスマッチしている感じがします。『トラックドライバーは経済を担うかっこいいプロ集団』と思われるよう、業界を底上げしたいです」
ライター・神谷加奈子