応募倍率10倍の運送会社が貫く「マメな発信」 若者を引き付けた働き方改革とイメージ戦略
ネットワークで輸送を効率化
川北さんはIT化と同時に輸送の効率化にも着手します。2002年には全国規模の物流ネットワークシステムに加入し、その後、協同組合13社(現在41社)も作りました。 「引っ越しなどでトラックを出すと、行きか帰りに荷物が空のまま走ることになり無駄が多くなりがちです。空きがある区間などを伝えると必要な業者から連絡がきて、荷物を載せることができるようになりました」 ネットワーク加入でトラック手配の無駄が減りました。「IT化で社内管理が効率化したことで、請負作業がスムーズになり多くの仕事をこなせるようになったと思います」
痛みを伴った働き方改革
2009年から働き方改革も本格化させます。経験者採用が主流の運送業界で、高卒の新卒採用を始めたのがきっかけでした。 運送会社は朝夕の点検や車両の輪止め(ストッパー)などの徹底が必要です。しかし、川北さんは「ベテランはこれまでの習慣からおろそかになることがあります。身についたものはなかなか治りませんが、新卒者なら最初に覚えたルールをきちんと守る」と考えました。 高校に出す求人票には月給、残業時間などを明記する必要があります。それまでは同業他社と同じ歩合制でしたが、月給制に変更。評価をつけるため、名札をつける、靴をそろえるといったルールを明確にしました。 歩合制では労働時間を短くすると稼げなくなるため、過重労働になる恐れがあります。しかし、月給制で適切な給料と労働時間を維持することで、クリーンな職場を目指したのです。 歩合制にやりがいを感じていた社員からは不満が噴出。2011年の離職率は65%にのぼりました。 それでも川北さんは改革を止めず、今度は20代の未経験者採用を進めました。ところが採用するものの、育てた社員が他社へ移るケースが相次ぎます。「ドライバー育成会社かな、という時代が5、6年あった」と振り返るように、この間に30%~40%の従業員が入れ替わったそうです。 「休みも少なく長時間労働、高速代は自腹というブラックに近い会社でも、歩合給だと給料が多く見えるんです。計算すると月給の方が時給が高いのですが…」 年商は下がり続けて一時は2億円台に。それでも痛みを伴う改革の中で「靴をそろえたり、あいさつをしたり。当たり前にできる人の方が多くなりました」。