応募倍率10倍の運送会社が貫く「マメな発信」 若者を引き付けた働き方改革とイメージ戦略
真っ赤なボディーは安全意識にも
カワキタエクスプレスのトラックは、真っ赤なボディーが目を引きます。かっこよさを追求して士気を上げるだけでなく、安全運転の意識を高める狙いもあります。 赤いボディーに変える際、ドライバー経験者から「運転を人に見られるカラーは嫌だ」と反対されたといいます。それでも川北さんは「こんなに目立つトラックに乗っていると、お客さんはすぐにどこの会社かわかるので、ドライバーは安全運転を徹底するようになります」と言います。 士気を高める工夫は随所に見られます。会社のロゴはレーシングカーをイメージして作られ、車好きの心をくすぐります。 玄関にレーサーの会見場のようなボードが立ち、社員が身に付けるオリジナルの帽子、タオルのほか、ペーパークラフトの赤いトラックなども制作しました。社員から次々とグッズ制作の要望があり、クラウドソーシングなどで発注しています。
SNSで見せる会社の素顔
川北さんは、SNSの普及前から会社の認知拡大にも積極的です。はじめは顧客に請求書を送る時、社内報を同封していました。メルマガにも力を入れ、今では2700人ほどに送っています。SNSが浸透すると、毎週のようにX(旧ツイッター)、Instagram、TikTok、YouTube、Podcastで投稿を重ねます。 力を入れるのは、会社の顔が見える動画です。Z世代の女性ドライバーにトラック車内でインタビューし、入社した経緯や働きぶりに迫ったYouTube動画が、6万6千回再生されました。TikTokでは川北さん自身が踊る動画が40万再生を記録しました。 ほかにも若手社員がホイールを磨く様子、トラックの内装、社員旅行のシーンなどの舞台裏を動画で紹介しています。 YouTubeではオリジナルソングを発表し、2024年からPodcastも始めました。「TikTokやYouTube、Podcastで拡散されることで、 私の人柄や会社の雰囲気がもっとわかると思うんです。入社後のミスマッチが減り、お客さんもこの会社にお願いしようと覚えてくれます」 動画は制作会社に発注し、Podcastも企画会社がサブパーソナリティーとして入り、雑談をする形で進めています。 数々のユニークな発信を行うのには、川北さんの問題意識がありました。「トラック運転手は誰でもできる仕事と思われています。実際、マナーを守らず、危険な運転、あおり運転などをするドライバーもいます。働き方もブラックで、残業代も出ず、何時間も働かないといけないイメージも根づいています。業界では働き方の待遇も低い会社に合わせられている。そうした現状を変えたいと思いました」 「マメな発信」は社員教育にも及んでいます。毎日の就業時にメールを送り、アルコールチェックの時は安全に関する1分動画を流します。月給を渡す時は、一人ひとりに激励メッセ―ジを添えます。「時々行う1日研修より、毎日1分」と川北さんは考えます。 「コンビニを出た時や道を走っている時、『トラックの運転手さんはかっこええな。礼儀正しく安全運転のプロやな』と思われたいんです。プロとして働く大切さを毎日伝えています」