【闘病】「胃薬飲めば大丈夫」と言われ症状を放置してしまった… 『クローン病』
まさか自分の栄養指導をするとは
編集部: どんな病気なのでしょうか? 鈴木さん: クローン病は、炎症性腸疾患の一つです。口から肛門まで、どの消化器にも炎症が起きる病気で、原因がある程度は分かっていても、完全には解明できておらず、治るものではありません。悪い状態から寛解の状態に持っていくのを目標とする病気です。10代の男性での発症例が多いのですが、私は27歳で分かりましたし、女性ということで、珍しいと言われました。 編集部: どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか? 鈴木さん: 方法は大きく分けて2つとのことでした。1つは手術を受け、炎症がひどいところを切る。そして、人工肛門を造る方法。もう1つは、薬物療法で、できるだけ寛解の状態に持っていけるようにすること。ただ、手術をしても、薬物療法は一生続けなければならないし、手術をしたからといって、新たな炎症が起きないとも限らないとのことでした。家族と相談して、手術は最終手段として、まずは薬物療法での治療を選択しました。 編集部: そのときの心境について教えてください。 鈴木さん: 手術はできるだけしたくないという想いがあったので、薬物療法で治療ができるならそちらを選択したいと自分でも思っていましたし、親戚に医者が5人いるので、相談もしました。日本で有数のクローン病に詳しい先生と言われている医師にセカンドオピニオンもいただき、「今の段階では薬物療法が望ましい」との意見もいただいたので、薬物療法の選択に迷いはありませんでした。 編集部: 実際の治療はどのようにすすめられましたか? 鈴木さん: 化学療法を開始すると、みるみる状態が良くなりました。炎症もおさまり、食事の許可が出ました。しかし、食事は腸への刺激になるので、食事をしてはまた熱を出し、絶食。安定したらまた食事を再開するといったことを何度か繰り返して、かなり食事制限があったものの、2ヶ月で退院することができました。 編集部: 受診から治療、現在に至るまで、何か印象的なエピソードなどあれば教えてください。 鈴木さん: 2014年に結婚し、2015年に男の子を出産したことです。この病気は女性の症例が少ないこともあり、大学病院でも、クローン病患者の出産は前例がなかったようです。そこでは「妊婦の時は比較的症状が安定し、産後に悪化するだろう」とも言われました。分からないことだらけの妊娠生活で、何かあった時の対応ができないとのことで、大学病院で出産しました。幸い、子どもは元気で異常無し。すくすく育っていきました。 編集部: ご自身に影響はなかったのですか? 鈴木さん: 私はと言うと、先生に言われていた通り、産後に悪化し、直腸に潰瘍がたくさんできてしまいました。動脈が切れて、何度も救急搬送されるという生活が5年ほど続きました。救急車もそれぞれ管轄があるので、自宅で呼んだ時は市内の病院に搬送されるのですが、私の場合、市外にある大学病院でしか対応できません。ですので、私が救急車を呼んだ時は、市を越えて離れた大学病院へ搬送してもらうよう、消防署へ予めお願いしていました。動脈出血で運ばれると、大腸カメラで確認し、すぐに止血術が行われます。そして、出血性ショックになってしまうので、輸血が行われました。ただ、炎症はストレスなども原因になりますが、食事による影響が大きく、絶食治療を半年続け、ある程度の寛解状態にまでは戻すことができました。 編集部: 病気になって感じたことを教えてください。 鈴木さん: まず、病気になったのが自分で良かったなと思いました。この病気は一生続くし、激しい痛みも伴います。私は家族が辛い思いをしているのを見るくらいなら、自分が背負えば良いと思いました。見ていて辛くなると思ったからです。この病気は食事制限があるので、食べたいものをいつでも食べられるわけではありませんが、状態が良い時は、少し食べることはできます。自分で調整すれば良いので、管理栄養士の資格があって良かったと思います。当時は、まさか自分の栄養指導をすることになるとは思ってもいませんでしたが。