【闘病】「胃薬飲めば大丈夫」と言われ症状を放置してしまった… 『クローン病』
若くて、毎日が楽しかったころ、多少の不調を「そのうち治る」と、放置してしまった経験があるという人もいるのではないでしょうか? 話を聞いた鈴木さん(仮名)もクローン病を放置してしまっていたそうです。仕事やスポーツに充実した日々を送っていて、検査・診断が遅れてしまったと言います。「私が病気なわけがない」と思い込んでいた生活から、どのように検査・診断に至ったのでしょうか。 【イラスト解説】クローン病になると表れる4つの症状・なりやすい人の特徴 ※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年3月取材。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
「私が病気なわけがない」と思い込んでいた
編集部: 最初に不調や違和感を覚えたのはいつですか? 鈴木さん: 激しい胃痛に体重減少、下痢、腹痛。今思い返すと、症状は2006年ごろから出ていたと思います。当時大学2年生で、大学生活やバイトを楽しんでいた私は、まさか病気だとは思わず、「お腹でも壊したのかな……」くらいに考え、町医者で胃薬を出してもらっていました。薬を飲んでも多少改善するだけで完治はしませんでしたが、そのころは毎日が楽しく、そのうち治るだろうと思っていました。 編集部: 悪化することはなかったのですか? 鈴木さん: 大学を卒業し、社会人になったのが2008年。希望通りの会社に入れて満足していました。希望とは別の部署でしたが、それなりにやりがいを感じながら楽しく過ごしていました。さらに2013年4月、密かに勉強していた情報処理試験の難関科目に合格し、それが評価されて、希望の部署に異動することもできたのです。その間も症状はずっと続いていましたが「私が病気なわけがない」と思い込み、町医者でも「胃薬を飲めば大丈夫」と言われていたので安心していました。そのころには、痛みや下血もするようになり、ひどい貧血症状も出始めていましたが、騙し騙し生活するのが当たり前になっていました。 編集部: 受診から、診断に至るまでの経緯を教えてください。 鈴木さん: 2013年6月、27歳の時に、市内の大きな病院を受診しました。そのころの私は、仕事も希望の部署に異動になり、仕事はやる気満々。運動神経が良いところが社内の野球部員の目に留まり、野球未経験者ながら野球部に入って、業務外でも楽しく過ごしていました。あるとき、野球の大会で優勝し、その賞金で焼肉の食べ放題に行きました。その夜に今までにないくらいの激しい腹痛、41度の熱で寝ることができませんでした。翌朝には全ての症状が落ち着いていたのですが、その様子を見ていた親に「さすがにおかしい」と、入院施設がある大きな病院に連れて行かれることになりました。 編集部: そこでクローン病がわかったのですか? 鈴木さん: 最初の問診で、医師から「クローン病の疑いがある」と告げられました。あれよあれよという間に、採血、採尿、造影CT、点滴の検査・処置が行われ、気がついたら夕方になっていた感じです。一般診療が落ち着いたころ、医師から検査結果の説明がありました。「おそらくクローン病だろうから、明日、胃カメラと大腸カメラを行う」とのことでした。翌朝、検査を受けた結果、即入院となりました。ただ、その病院には常勤の消化器内科医が1人しかいないとのことで、県で1番大きい大学病院のベッドが空き次第、転院すると言われました。ベッドが空くまでの1週間、点滴のみで栄養を補給し、食べ物・飲み物をいっさい口にできませんでした。翌週、大学病院に移り、もう一度詳しい検査をするとのことで、採血、採尿、胃カメラ、大腸カメラ、小腸内視鏡、造影CTを再度受けました。結果はやはりクローン病。そこから約2ヶ月入院することとなりました。 編集部: 告知はどのような形でしたか? 鈴木さん: 両親とともに、ナースステーションでパソコンの検査画像を見せてもらいながら説明を受けました。この時は、現実を受け入れられず、半分パニックになっていたと思います。泣きながら話を聞いていた記憶しかなく、何を説明されたのかは覚えていません。大学病院では、まずは私が1人の時に主治医が部屋に訪れ「クローン病で間違いない」と言われました。その後、母が呼ばれ、詳しい説明を2人で聞きました。現在の状況、治療方針、これからの生活について、一通り説明を受けた記憶があります。この時は、ある程度の気持ちの整理がついていたので、落ち着いて聞いていたと思います。 編集部: 受け入れるのには時間がかかりますよね。 鈴木さん: 私は大学で管理栄養士の資格を取っていたので、クローン病という名前を聞いて、難病であることや食事制限が必要であることは瞬時にわかりました。詳しい説明を聞く前に、自分がどうなっていくのかが分かってしまっていた分、普通の人より早く絶望感を味わうことになってしまったのかもしれません。