ファッション小売 の未来は「コミュニティ重視のコンセプトストア」か?:Luxury Briefing
シェアスペースこそが勝利の方程式
パンデミック時のeコマースブームの後、実店舗での小売が再び大きく活気を取り戻している。多くの消費者はいまも外に出かける自由を謳歌しており、ショッピングは楽しいアクティビティや社交の機会となっている。同時に、デジタル広告で新たな課題に見まわれているブランドは、ブランディングや認知度向上の役割としての店舗を新たにオープンしている。 だが、画面をスクロールしてカートに入れるという習慣が高まるなかで、店頭での買い物客を獲得するには、商取引以上の体験の必要性がさらに増している。新興ブランドがそれをうまくやるのは難しい場合が多い。マルチブランドのコンセプトストアがその機会を開こうと試みてきたが、そちらもまた困難に直面している。いま小売企業の新しい波が、ひとつの消費者カテゴリーに焦点を絞って複数のサービスを提供するシェアスペースこそが勝利の方程式であるということを証明しようとしている。 「多くの(小売)企業は、より多くの体験を創造すると言ってきたが、そのような店舗に行くと、単にインスタ映えする瞬間があるだけだ」とコーエン氏は言う。「若い世代にとって、ショッピングは商品よりも自己表現の手段になっている。若者は自分たちが単なる店ではなく何かもっと大きなものの一部であると思いたいのだ」。コーエン氏はラルフズ・コーヒー(Ralph’s Coffee)、キス(Kith)、エメ・レオン・ドレ(Aimé Leon Dore)をインスピレーション源と呼ぶ。こうしたブランドの顧客は、ブランドが築き上げたコミュニティをベースにした店舗にわざわざ足を運び、コーヒーやおやつを購入するからだ。 コーエン氏がもうひとつ参考にしたのは、ニューヨークのマディソンスクエアパーク(Madison Square Park)にあるトッド・スナイダー(Todd Snyder)の店舗だ。ジョー・コーヒー・カンパニー(Joe Coffee Company)のカフェのほか、理髪店、サードパーティのテーラー、そして下の階にはジムがあるのが特徴だ。「(スナイダー氏が)全体のキュレーターだった」とコーエン氏。「そして(含まれている)企業のそれぞれが、店舗への常連客を生み出している」。