工藤遥が明かす役者になった理由 やっと立てたスタートライン
アイドルをやめたら俳優になろうと決めていた
工藤は2010年にハロプロエッグに加入し、アイドルとして芸能人のキャリアがスタートしたが、その経験がいまに生きている。 「中学生のときに出演した舞台でお芝居の面白さに気づいたんです。稽古中、すごく演出家の先生に怒られて、しごかれて、『マジで舞台なんか二度とやりたくない!』って正直思ったのですが、本番が始まって公演を終えたときにすごく褒めていただいて達成感があって。歌やダンスで表現することも好きですが、それ以上に、自分じゃない誰かの人生を歩んで行く、今回の作品でいえば池田雪という女の子が伝えたいものを、私の体をお貸しするので『どうぞ生きてください』という、そんな感覚が楽しくて。アイドルをやめたら俳優になろうって、ずっと前から決めていました」 望んで臨んだ俳優という仕事だが、壁を感じることもしばしばあるとか。 「ご一緒させていただく皆さんとのレベルの差を感じて情けなくなることもありますし、監督から求められていることは理屈ではわかっても、その感情に追いつけない瞬間に、やっぱり壁を感じます。でも私、負けず嫌いなので、そこで『誰にも負けたくない』という気持ちが出て、いつも頑張って理解度を深めて行ったり、絶対に折れないという気持ちが支えてくれています」
人生経験が不足し過ぎていることに気づいて
そしてアイドル時代と比べて、変わったことがあるという。 「プライベートを充実させる努力をするようになりました。もともとプライベートとお仕事を別にすることができなくて、全部が自分の人生の毎日だという認識があったんです。だから、プライベートって何だろうな、別に要らないな、仕事好きだし、なんて思っていたんです。でも役者になって、自分の人生経験が不足し過ぎてお芝居に出せる引き出しがぜんぜんないということに本当に気づかされて。それから私、友だちと久しぶりに会うときの、あの『久しぶり』という空気感が苦手なのですが、頑張ってそういうところに踏み込んでみるようになりました。それと、1人でなるべくいろいろなところに行く、足を運ぶ、いろんなものを見る時間を作るようになりました。自分で見聞きしたものが一番のアイデアだし、役を演じる際にもあてはめやすいですから。そのインプットが少ないと、妄想だけでは限界がくるので」 俳優と日常が歩調を合わせるように一致した。工藤の役者人生はこれから始まる。 (写真と文:志和浩司)