消えた芸能人ハワイ取材 全盛時の手法を振り返る
芸能界恒例ともいえるお正月の芸能人のハワイ行き。今年はコロナ禍で事実上の消滅状態となったが、長らく芸能ニュースでは年末の紅白歌合戦から続く新年の話題の定番でもあった。もともとハワイ在住の芸能人もいるが、中には紅白終了後にそのまま機上の人となる芸能人もいた。かつては正月をハワイで過ごし、それをメディアに追いかけられるのが一流の芸能人の証でもあった時代があった。
事前に到着便情報をリークする芸能人も
筆者が芸能メディアの仕事に携わるようになった2005年頃は、まだそんなハワイ全盛の時代が続いていた。芸能メディアはまだまだテレビ主流の時代で、ワイドショーが現地にクルーを派遣して連日、芸能人の様子を伝えた。せっかくのプライベートをメディアに追いかけられては芸能人もたまったものではないだろうが、メディアに追われている様子がワイドショーに乗ることを「PRになる」とか、ある種ステータスとして考える芸能人もいて、そのあたりの考え方やさじ加減は人によって微妙に異なった。中には空港取材がしやすいように、出発便と到着便の情報を事前にメディア向けにリリースする芸能人もいたのだ。 そんな中、筆者が過去に在籍したモバイルニュースのメディアではテレビのような予算は到底かけられないものの、それなりの予算を確保して有名リポーターの梨元勝さんとスタッフを毎年現地に派遣し、他のメディアとともに空港でハワイ入りする芸能人を待ち構えた。時差があるため編集部では毎年正月は休みなく徹夜状態となり、ハワイから続々到着する写真や原稿を配信し続けたものだった。
取材の成否は現地でのコネクション
ちょっとたとえは飛躍してしまうが、特殊部隊が政敵を倒すために相手国に実行部隊を派遣する際、数ヵ月あるいは数年前から現地に隊員を送り込んで情報収集をするのだ、という話を聞いたことがある。情報収集の段階で作戦の成否はほぼ決まるという。ある意味、ハワイ取材も似たようなところがあって、現地でのコネクションが構築できていてあらかじめ情報を得られているかどうかがモノを言う。前述の梨元さんなどは、たとえば芸能人がよく訪れる飲食店などにも太いパイプを持っていて、空港での待ち伏せ取材のみならず、現地での詳細なエピソードや行動などを驚くほど収集して送ってくれた。 当然、現地で動くにも経費がかかるし通信代もバカにならないが、それでも見合うぐらいの需要があったからこそ、毎年ハワイ取材を企画・実行できたのだった。