お人好しであることが、自分の可能性を広げる理由とは?―坂東眞理子『幸せな人生のつくり方――今だからできることを』
どう生きれば幸せになれるのか?――昭和女子大学総長で、数々のベストセラー著書を持つ坂東眞理子さんが、幸せな人生を手に入れるための、日常の過ごし方、心の持ち方、考え方をつづった著書『幸せな人生のつくり方』。この本より、一部を抜粋してお届けします。 ◆遅い助けは助けにならない (LATE HELP IS NO HELP ) ◇頼まれたことはすぐやる 「頼まれたことはすぐやる」。これは私が埼玉県庁で働いていたときに親しくしていただいた、三角信子さんというガールスカウトで活躍された方の言葉です。 団体活動をするときにはメンバーに助けを求められる場合があります。そのときに、「ちょっと待ってください」とすぐに動かず、しばらく経ってから、「今ならできますよ」と言っても問題はすでに解決している、あるいは取り返しのつかない事態になってしまっている。相手が助けを求めたときに助けなければ、相手のニーズにこたえることはできません。相手がSOSを発するのは、そのときに助けが必要だからです。頑張っているけれど締め切りに間に合わないとき、思いがけない失敗やミスが起こったとき、家族や自分が倒れたときです。そのときには取るものもとりあえず駆けつける。これが友人の付き合いの基本です。 ◇ お人好しであることが、自分の新しい可能性を広げてくれます 自分にはお金がないから、今忙しいから、権限がないからなど、すぐに助けに行けない理由は山ほどあります。時間が経ったらその理由が解消されるわけではありません。できない理由や、なぜできないかの言い訳を考える前に何ができるか考えましょう。助けようとしても自分には余力がない、なんで自分に助けを求めてきたんだろう、何か裏はないか、などと慎重に考え出したら動けません。頼まれるのは頼りになると思われているからなんだと、及ばずながらやってみる。そうしたお人好しであることが、自分の新しい可能性を広げてくれます。私は、お人好しで軽はずみなので失敗も損もしていますが、そのおかげでいろいろな出会いに恵まれてきたと思っています。 ◇ すぐ動けないのは子供時代の習慣にも すぐに動くかどうかは子供のときの習慣も影響します。手伝ってと言ってもテレビを見ていて「後で」、ゲームをしていて「後で」と言う子供を「仕方がない」と認めていると、頼まれてもすぐ動けない子になってしまいます。昔は男の子は勉強を優先させて女の子には厳しく手伝いをさせた家庭が多かったのですが、今は女の子も男の子も勉強優先か、逆に放任かの「家庭 教育」の二極化が進んですぐに動けない子が多くなっています。 声がかかったときに動くことは自分に新しい可能性を開いてくれるのだよ、友達が困っているときに助けると、とても感謝されるよ、という人間として大事なことを親はしっかり子に伝えなければなりません。人を助けることができるのはとてもうれしいこと、ありがたいことなのだ、自分に価値があるとわかるのは、助けを求められた友人を助けることができるときだと伝えましょう。 ◇ すぐ動く習慣を イスラム教をはじめ長い間多くの人に信仰されてきた宗教は、信者同士が助け合うことを奨励しています。困っている信者仲間を助けるのは〈喜捨(きしゃ)〉といって信者が守らなければならない重要な教えです。仏教でもお寺やお坊さんに布施(ふせ)、キリスト教でも寄付や寄進することを勧めていますが、多くの世界宗教は自分だけが金持ちになることを求めてはいけないと戒めています(今、資本主義が行き過ぎてお金持ちがますます金持ちになり、貧しい人がますます貧しくなるのは、この格差に歯止めをかける宗教や倫理観などの力が弱くなってしまっているからだと思います)。 すぐに動く習慣のないまま大きくなった大人、助けを求められても後でとパスする大人が増えているだけに、遅い助けは助けにならない、と自分に言い聞かせて「頼まれたらすぐやってみる」と動く習慣を子供の頃から身につけさせるよう努めましょう。 [書き手]坂東眞理子 [書籍情報]『幸せな人生のつくり方――今だからできることを』 著者:坂東眞理子 / 出版社:祥伝社 / 発売日:2024年06月12日 / ISBN:4396318472
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