都議会に「与党」「野党」は必要か 国会とは一味違う地方自治
地方自治体の場合
一方、こうした国政の仕組みとは違い地方自治体は二元的な代表制であり、執行機関の首長は直接公選で選ばれるのであって、議会から指名される訳ではない。だから首長と議会との間に国会と内閣との間に見られるような制度上の与野党関係は存在しないのである。 むしろ議会は首長に対し民意の代表機関として対等に向き合う関係にある。多額の予算と条例の執行など多数の職員を補助機関として使う公選首長に対し、制度上は議会全体として監視・批判・修正・代案といった“野党的な機能”を果たすことが期待されている。住民自治を体現する機関が議会であり、首長のワンマン、執行活動の独善の防止である。
しかし現実には、首長選のときに特定候補者を支持した議会内の党会派はその候補者が当選し首長になると、その首長に対し自らを「与党」と捉え、首長サイドもそれを是としそのグループを「与党」とみなしがちとなる。結果、その「与党」と執行部との間に一種の「馴れ合い」が始まる。一方、そこから外れた他の党会派は対抗上、必要以上に「野党」たろうとし、議会審議における合意形成を困難にしてしまう傾向も出てくる。 国と地方は全く違う制度下で政治を行うことが求められているのだ。にもかかわらず、自治体の首長と議会の関係はそれを同一視した、国会と内閣との関係をモデルにした政治運営となる傾向が強い。議会と首長とがともに住民の代表機関としてそれぞれ独自の役割をもって牽制し合うという機関対立主義の関係にあることを軽視してしまうのである。
“与党のうま味”とは制度破壊の産物
共に住民に選ばれた身として抑制均衡関係を保つよう求められている首長・議会だが、議会内に与野党意識が芽生えると何が起きるのか。 例えばこうだ。「与党」と思い込んでいる多数会派が、他の会派に先立って事前に優先的に執行機関側から相談とか協議を受けるのは当然と考え(いわゆる根回し)、そう要求したりする。予算編成の仕上げ段階で事前に与党の要求を受け入れる(〇×▽など個所付けをする)、また与党議員の意識で地元選挙区の様々な要求をアンダーテーブルで伝え予算化するよう迫る。地元の行事に首長の出席を求める。また首長選を間近にひかえた議会審議では「与党」議員が首長の実績を必要以上に褒め称え、追従して「八百長質問」をすることも出てくる。都民ファが小池都政4年間を絶賛する風景はそれに近いものだ。 他方「野党」と思い込んでいる会派(ここ4年間の自民、共産)や議員は、本会議や委員会審議などを通じて意思決定過程に重要な影響を及ぼしながら、決して責任を問われる立場に立とうとせず、質問攻めなど執行機関を責め立てることに終始する。 また、首長の党派的な支持基盤と議会多数派の政治色が異なる場合(俗にいう「ねじれ」)、「少数与党」の首長が副知事、教育長などの議会承認人事を提案しても否決、何度出しても承認を得られず苦境に立つことがある。これは、議会の多数派が首長選で推した候補が敗れて「野党」意識を強く持つためで、一種の「いやがらせ」に近い。住民の幅広い支持を集めて選ばれた首長の行財政運営を妨害しかねない結果となる。 それとは対極に、現職の首長をほとんどの党会派が選挙で支持する、いわゆる「相乗り型」になると(オール与党化)、議会審議は形式化し著しく空洞化したものになる可能性がある。何でも知事が提案したことが無批判的に通るようになる。首長と議会が相互に競い合い政策を磨くことを求める二元代表制の意味が失われ、翼賛議会に堕してしまう。