考察『光る君へ』33話 中宮女房ズメンバー紹介!道長(柄本佑)からまひろ(吉高由里子)に贈られた檜扇にはきらめく水辺で遊ぶ、あの日のふたりが…
20年の時を経ての意趣返し
与えられた局でいざ執筆に取り掛かろうとするものの、横をパタパタと走り抜ける女童(めのわらわ)達。落ち着かないまひろだが、この場面は女童の白い汗衫(かざみ)が美しい。 公任(町田啓太)と斉信(金田哲)の来訪。ここで慌てて檜扇で口元を隠すまひろ……レビュー第1回で述べたとおり、この作品は帝の后でさえ男性の前で顔を隠していないので突然どうしたのかと思ったが、その後の場面と合わせて見ると、どうやら檜扇は内裏女房の必須アイテムとして演出に入れたらしい。そういえば今までも内裏のシーンでは、ヒソヒソ噂話女房さんたちは口元に檜扇を当てていた。 中宮女房ズについて「見栄えはしても鈍いのは困るなあ、ハハハ」など言いたい放題のふたりに、うふふふと低い声で笑ったまひろが 「私のような『地味でつまらぬ女』は、己の才を頼みとするしかございませぬ」 と返した言葉に「ん? 」とひっかかる公任、斉信コンビ。これは7話の打毬試合の後、ロッカールームでの勝手な暴言に一矢報いたものだ。あれは寛和元年(985年)だったから寛弘2年(1005年)の今、20年の時を経ての意趣返しである。まひろさん、かなり根に持つタイプ……さすがです。 そして書き始めたのは『源氏物語』第二帖「帚木」の、「雨夜の品定め」に発展すると思われるネタのメモ。「打毬 雨 受領品 片かどもなき人(ちょっとした取柄さえない人)」 ふたりのおかげで捗りますね。 次のシーンでは優雅ではあるが「暖簾に腕押し」といった風情の中宮女房ズの仕事ぶりが見られた。 斉信がまだそこにいるのに、大きめの声で「聞きたいことなど、ありませんわよねえ」と聞こえよがしに言う左衛門の内侍。「中宮大夫様(斉信)は何につけ偉そうになさりたいだけよ」と相槌を打つ馬中将の君。 斉信は「中宮様にお伝え申せと言っても伝わらぬし言ったことはやらぬ」「鈍いのだ」と彼女たちを嗤っていたが、どうも中宮大夫としての彼が舐められているというのが実情のようだ。 威圧的にふるまえばふるまうほど小馬鹿にされる女子校の先生を思わせる。 藤式部は父の位が低いのになぜ中納言(公任)らと親しいのかという話題から、まひろが四条宮和歌教室の講師であったこと、赤染衛門の生徒でもあったことが皆に伝わる。その場面の各人の表情から、少なくとも「学がおあり」であることは中宮女房ズに好意的に受け取られたようだ。一部を除いて。
【関連記事】
- 考察『光る君へ』16話 『枕草子』づくしの華やかな宮廷サロンの影、都には「疫神が通るぞ」…極楽に清少納言、地獄に紫式部
- 考察『光る君へ』17話「あの歌で貴子と決めた」道隆(井浦新)が見失わなかった愛、まひろ(吉高由里子)は友への強い思いで筆をとる
- 考察『光る君へ』18話 道兼の死に涙するとは…玉置玲央に拍手を!まひろ(吉高由里子)は人気ないらしい道長(柄本佑)に「今、語る言葉は何もない」
- 考察『光る君へ』23話 宣孝(佐々木蔵之介)が越前に来た!ウニを匙で割ってご馳走する可愛いまひろ(吉高由里子)に「わしの妻になれ」ドンドコドン!
- 考察『光る君へ』30話 晴明(ユースケ・サンタマリア)「いま、あなたさまの御心に浮かんでいる人に会いに行かれませ」道長(柄本佑)動いた、ついに来るか「いづれの御時にか」!