「夏の甲子園ベストナイン」を現地取材記者5人が選出! 強打から堅守へ、新時代で輝いた選手は?
菊地高弘氏(ライター) 投手/田近楓雅(智辯学園)捕手/奥井颯大(京都国際)一塁手/原田純希(青森山田)二塁手/柴田元気(東海大相模)三塁手/田西称(小松大谷)遊撃手/市川歩(関東一)外野手/上川床勇希(神村学園)外野手/藤原佑(大社)外野手/安井康起(報徳学園) これほど「左投手のチェンジアップ」が存在感を放った大会も記憶にない。決勝戦に進出した京都国際の西村一毅(2年)、関東一の畠中鉄心は象徴的だった。圧倒する剛速球がなくても、打者をのめらせてフルスイングをさせない。「低反発バット時代」を生き抜くためのひとつの方法を示したような気がしてならない。 そのなかでも健大高崎、大阪桐蔭ら強豪がひしめいた「死のゾーン」を勝ち上がった智辯学園のエース左腕・田近のチェンジアップは印象深かった。田近に1失点と封じられて春夏連覇を阻まれた健大高崎の打者は「あんなチェンジアップを初めて見ました。対策のしようがないですよ」と語っていた。まさに「初見殺し」の必殺球だった。 今大会は好捕手も多かった。U-18代表に選出された箱山遥人(健大高崎)、熊谷俊乃介(関東一)はもちろんだが、全国制覇へと牽引した京都国際・奥井颯大のキャッチングに強く惹きつけられた。いかにも脱力した構えで、ミットを下から上へと扱うフレーミング。ミットにボールが吸い込まれる感覚で、「投手は投げやすいだろうな」とうらやましさすら覚えた。フレーミングにかけては坂本誠志郎(阪神)を彷彿とさせた山下諒太(石橋)、低い軌道で正確なコントロールの二塁送球を披露した青森山田の橋場公祐も印象深い。 一塁は、石橋戦でバックスクリーン右に特大の一発を叩き込んだ原田。二塁には攻守で存在感を示した柴田を選出。三塁は、大阪桐蔭戦で貴重な追加点となる一打を放ち、なによりフルスイングが印象的だった小松大谷の田西称。 上位進出校はどのチームもすばらしい遊撃手がいたが、とりわけ関東一・市川歩の守備は神がかっていた。記録上はすべて「遊ゴロ」なのだが、難しいバウンドでのハンドリング、ボディバランス、正確な送球、1プレー1プレーの密度があまりにも濃かった。打者としては17打数2安打に終わったのが些末に思えるほど、貢献度は計り知れない。遊撃手の重要性をあらためて思い出させてくれた。 外野手は、準決勝の神村学園戦で奇跡のバックホームを見せた関東一の飛田優悟など印象に残る選手が多かったが、シュアな打撃が光った3人を選んだ。