「夏の甲子園ベストナイン」を現地取材記者5人が選出! 強打から堅守へ、新時代で輝いた選手は?
元永知宏氏(ライター) 投手/馬庭優太(大社)捕手/奥井颯大(京都国際)一塁手/國光翔(早稲田実)二塁手/三谷誠弥(京都国際)三塁手/高崎亘弘(早稲田実業)遊撃手/藤本陽毅(京都国際)外野手/上川床勇希(神村学園)外野手/飛田優悟(関東一)外野手/藤森海斗(明徳義塾) 今大会のホームラン数はわずか7本。大量得点が望めないために、緊迫したしのぎ合いが数多く見られた。早稲田実業と大社はその代表的な試合だろう。ひとつの四球、守備の綻び、ランナーの判断が勝敗を左右することになった。 京都国際の中崎琉生、西村一毅、関東一の畠中鉄心、鶴岡東の桜井椿稀など左投げの好投手が目立つなかで、ひと際強いインパクトを残したのが大社の馬庭優太だ。4試合で投げた492球すべてに渾身の力を込めていたように見えた。複数投手による継投策はもう当たり前、こんなエースらしいエースはもう出てこないかもしれない。 捕手は複数投手を巧みにリードした関東一の熊谷俊乃介、京都国際の奥井颯大、早稲田実業の宇野真仁朗を完璧に封じた億田知輝の3人で迷ったが、優勝校に敬意を表して奥井を選出。 一塁手の國光翔のバント処理における身のこなしのよさと送球の速さ、正確性は見事というしかなかった。接戦やタイブレーク制で勝つためのお手本となるプレーだった。関東一のセンター・飛田優吾が見せた、準決勝・神村学園戦9回裏のバックホームも、後世に語り継がれる価値がある。 最後に、早稲田実業と大社との試合で、途中出場したふたりの名前を挙げたい。9回のサヨナラ負けのピンチで5人目の内野手としてゴロを処理した早稲田実業の西村悟志、延長11回に代打で三塁線にバントを決めた大社の安松大希だ。今後も1点を巡る接戦が多くことが予想されるなかで、彼らのような仕事人の働きが勝利のカギを握ることになるだろう。
田尻賢誉氏(ライター) 投手/西川大智(小松大谷)捕手/箱山遥人(健大高崎)一塁手/佐坂悠登(智辯学園)二塁手/小島想生(関東一)三塁手/日賀琉斗(東海大相模)遊撃手/市川歩(関東一)外野手/上川床勇希(神村学園)外野手/入耒田華月(神村学園)外野手/長谷川颯(京都国際) 投手は、大阪桐蔭を92球で5安打完封した小松大谷の西川大智。球速は130キロ台と平凡ながら、走者なしでもボールを長く持って間を変え、クイックを交えてタイミングを外す投球は見事だった。ぜひ、全国の高校生投手は参考にしてもらいたい。 捕手は健大高崎の箱山遥人。智辯学園戦では一塁手の森山竜之輔と息の合ったサインプレーで、一塁ランナーをけん制で刺した。バントの打球に勢いよく飛び出してのランニングスローと守備で成長を見せた。今年の健大高崎は秋の関東大会で負けて泣くほどの熱いチームだったが、その熱量も箱山が雰囲気をつくったからこそ。キャプテンとしての姿勢もすばらしかった。 一塁手は智辯学園の佐坂悠登。初戦の岐阜城北戦では5安打と、振ればヒット状態。俊足ではないが、投球がワンバウンドになると見越して軌道でスタートする走塁も見せた。二塁手は関東一の小島想生。球際の強さは、すばらしいのひと言に尽きる。明徳義塾戦の勝利は小島のファインプレー抜きには語れない。 三塁手は東海大相模の日賀琉斗。雨が少なく、高く跳ねる今夏の甲子園で難しいバウンドをいとも簡単にさばく守備力は圧巻だった。遊撃手は優勝した京都国際の藤本陽毅と迷ったが、好守を連発した関東一の市川歩。打力こそないが、その分、失点を何点防いだか。小島との二遊間コンビがいなければ関東一が決勝まで勝ち上がることはなかった。低反発バット元年にあらためて守備の大切さを教えてくれた。 外野手は神村学園からふたり。左翼手・上川床勇希は167センチ、中堅手・入耒田華月は166センチとともに小兵だが、徹底して逆方向を意識する打撃で内からバットを出し、結果を残した。上川床は22打数11安打の打率5割、全試合で打点を挙げる活躍。入耒田は中京大中京戦で貴重な本塁打を放った。 右翼手は京都国際の長谷川颯。元投手で強肩を期待されながら、センバツの青森山田戦ではバックホームで刺せず悔し涙。準決勝で再戦した青森山田戦では劣勢の6回表に同点の2点タイムリーを放ち、その裏は一塁から三塁を狙った走者を見事な返球で刺してリベンジを果たした。