[特集/フリック・バルサ徹底分析 03]1年目から3冠の可能性大 フリック・バルサはペップ・バルサの再来か?
L・エンリケが加えた修正 MSN主体にカウンター発動
バルサの中盤はカンテラの聖域──。シャビ、ブスケッツ、イニエスタの存在は大きく、そう呼ばれる時代が続いたなか、2014-15から指揮したルイス・エンリケは新戦力のイヴァン・ラキティッチ、ラフィーニャなどをインサイドハーフに起用した。35歳のシャビ、孤軍奮闘だったイニエスタの負担を減らすべく、中盤の顔ぶれに変化を加えたのである。 そもそもこの年は力を入れた補強が行われ、前線にはルイス・スアレスが獲得されている。これにより、メッシ、スアレス、ネイマールが3トップを務めることに。サッカー界を席巻した“MSN”の誕生で、この布陣でルイス・エンリケのもと2度目の3冠達成を成し遂げるに至っている。 ただ、ラ・リーガは順調に優勝したわけではなく、第9節、第10節には連敗があり、一時は4位まで順位を下げている。馴染むまでに多少の時間はかかったのである。しかし、試合をこなすことで強力3トップが機能しはじめると、勝点をどんどん増やしていった。 同じころ、ライバルのレアルは“BBC”と呼ばれた3トップ、カリム・ベンゼマ、ガレス・ベイル、クリスティアーノ・ロナウドを擁するスタイルがマンネリ化し、逆に勢いを失っていった。第28節には1位バルサと2位レアルによるクラシコが行われた。この一戦にスアレスの決勝点で勝利したバルサが勝点差を4に広げ、その後に追撃を受けながらも最終的には勝点2差で優勝している。 国王杯は全勝で制し、2冠を達成。シーズン終盤になるとルイス・エンリケのもと培ってきた新たなバルサのスタイル、ポゼッションするだけではなく、カウンターからMSNがゴールするパターンが散見されるようになっていった。 CL決勝のユヴェントス戦には3-1で勝利したが、開始4分にラキティッチが奪った先制点は複数の選手が連動してボールに触っており、バルサらしいパスワークでゴールネットを揺らした得点だった。その後に追いつかれて1-1となったが、2点目、3点目は素早いカウンターからスアレス、ネイマールが決めており、ポゼッションだけではない新たなスタイルをみせての欧州制覇であり、3冠達成だった。 イニエスタ、ブスケッツ、ピケ、ペドロ、ジョルディ・アルバなど、この年もカンテラ出身者は一定数いたが、ペップ時代ほどバルサ色は強くなかった。ルイス・エンリケが進めたのはバルサ色をベースに新たな色、しかも強烈に発光する色を加えるスタイルで、MSNがそれを可能にしていた。 しかし、レアルのBBCがそうだったように、バルサのMSNも永遠ではなく、その後にエルネスト・バルベルデ、キケ・セティエン、ロナルド クーマンが監督を務めるなか、メンバー編成や戦うスタイルが変化していった。決して良い流れではなかったなか、2021-22にクラブレジェンドであるシャビが監督に就任。カンテラ出身者を軸とする強化に回帰され、今季に至るベースが作られていった。