AGA治療では推奨されない治療も行われている!? 事実と異なる定説も解説【AGAのイマ】
AGA治療の注意点
編集部: そのほかにはどのような治療法がありますか? 栁澤先生: 医療機関ではさまざまな治療法が行われています。しかし、日本皮膚科学会が作成している「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」では、治療別に推奨度が記載されていますが、そのなかで「推奨度A(強く勧める)」とされているのはフィナステリド、デュタステリド、ミノキシジルの3つだけです。 また、「推奨度B(行うよう勧める)」として植毛術とアデノシンの外用が記載されています。治療を行う上ではこうしたガイドラインに準拠したものかどうか、確認することが必要です。 編集部: ガイドラインで推奨されていないのに、治療が行われていることもあるのですか? 栁澤先生: はい、残念ながら非常に多く見受けられます。ガイドラインでは推奨度をAからDまでのランクで示していますが、推奨度c2の治療法は行わない方がよい、推奨度Dは行うべきではない、と学会が定めるものです。 こうした治療を行う医療機関も少なくないため、治療を開始する際には、その治療法が安全なものであるかどうか、患者さん自身、ガイドラインに照らし合わせて確認することが大切です。 編集部: そのほか、AGA治療で気をつけることはありますか? 栁澤先生: 最近ではオンライン診療も普及しており、非常に便利になっています。しかしその一方で、医師による説明が不足していたり、あるいは無診療で薬を処方していたりするケースも少なくありません。 医師による説明が不足したまま不適切な治療が行われていることは、厚生労働省も問題視しています。 編集部: それはとても怖いことですね。健康被害も出ているのですか? 栁澤先生: 場合によってはそのようなケースもあるでしょうし、不適切な治療を行っても効果が期待できないので、治療期間が長引けば長引くほど薄毛がどんどん進行してしまうというケースもあります。 そもそもAGAの治療は年単位の時間をかけて、ようやく効果が実感できるというもの。治療を継続する上では、医師と患者の信頼関係が重要なのです。そのためにも、患者に治療法のメリットやデメリットについてしっかり説明し、常に二人三脚で治療に取り組んでくれる医師を探すことが大切です。 編集部: 医師選びのポイントは? 栁澤先生: AGAに限った話ではないですが、医療の大前提として患者さんと医師の信頼関係が非常に大事です。信頼できる医師のわかりやすい見分け方としては、よく話を聞いてくれる、丁寧にゆっくりわかりやすく説明してくれる、というのがポイントだと思います。 「説明は医師ではなくカウンセラーが行う」「医師の診察が無い、またはあっても挨拶程度」というのは好ましくなく、厚生労働省でも大問題になっている無診療治療という、明確な医師法違反にあたります。AGA治療は命に関わらないとはいえ、れっきとした医療行為です。 短い診察時間ですがしっかりコミュニケーションを取り、信頼できる医師から適切な医療を受けることをお勧めします。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 栁澤先生: AGAや薄毛の情報はインターネットでたくさん公開されていますが、残念なことにそうした情報は玉石混交であり、間違った情報が多く氾濫しています。 正しい情報に行き着くのは困難であるため、正確な知識を得たいと思ったら医師に相談することを強くおすすめします。 ただし、医療機関によってはガイドラインに準拠せず、推奨されていない治療を行っているところもあるので、患者さん自身もガイドラインに目を通し、治療法についてある程度、知識を得ることが大切だと思います。