新NISA開始から一年、初心者の半数に悩みや不安「暴落が不安」「今の銘柄でよいのか」 知識不足解消にFPに聞いたNISAの点検方法は #くらしと経済
「ほったらかしが基本」といわれるつみたて投資枠 それでも点検が必要なわけ
長期にわたって資産形成することを目的としている「つみたて投資枠」は、「ほったらかし」にするのがよいといわれている。ほったらかしの反対のやり方は、売買による銘柄入れ替えだ。「売買は多くの場合、手数料がかかります。さらに、売買を繰り返すためには運用商品の情報が必要であり、素人や初心者には難易度が高いといえます」と植田さん。さらに、一定額で毎月積み立てていく購入方法(ドルコスト平均法)は、値下がり時に買える口数が増えるため、「『長期的には右肩上がり』という現在の経済情勢の下では優位になることが多い」(植田さん)という。
アンケートでも「乱高下は気にするなというが、最初は下がると心配になった」(60代男性)、「暴落する不安が常につきまとう」(50代男性)という声があるように、売買を繰り返すことを前提とすると、株価や基準価額の変動に一喜一憂することになり精神衛生上もよくない。植田さんは、「『ほったらかし』の姿勢は、金融機関担当者の営業攻勢を避けるにも効果的。投資信託ではインデックス投信を選ぶなど銘柄選びをしっかりすれば、基本的には『ほったらかし』でよいと思います」と言う。 一方で、アンケートにもあったように、知識不足などにより「どうしていいかわからない」ので「ほったらかし」というのはあるべき姿ではないと、植田さんは指摘する。 「経済は生き物なので8月の大暴落のように大きく変動することがありますが、いつ変動するかの予測は不可能です。さらに、ライフプランやマネープラン、資産状況は変わっていくものですので、『ほったらかしが基本』といわれるつみたて投資枠であっても定期的に点検して、状況を確認しつつ続けていくことが必要です」 では、具体的になにをしたらよいのか。初心者がまず始めることが多いNISAの「つみたて投資枠」を使っているケースを仮定し、植田さんに解説してもらった。
NISA、できれば毎月点検を 最低限見ておきたい項目は
まず点検項目として挙げられるのは、①利益額または損失額を表す、点検日時点の評価額と取得価額との差額だ。自分の持っている投資信託が合計いくらになっているのか、購入時に支払った額や前回の点検時の額と比較してみよう。 次に目を向けたいのが、②基準価額の推移のグラフだ。「普段、郵送でNISAの報告書を受け取っている方などは、保有する銘柄名をインターネットで検索することでチャートを見ることができます」 そして、三つ目が、③NISAだけでなく、現金や預貯金、生命保険などすべての金融資産の合計額だ。「収入が安定していない場合などは、NISAなど投資に毎月一定額を積み立てていたら、預貯金などの元本保証の金融商品の割合が少なくなっていたということもあり得ます。金融資産全体をみて、バランスがとれた状態を保てているか、チェックすることも重要です」 これらの項目を、「できれば毎月、最低限半年に一度は点検して」と植田さんは言う。 例えば、収入の増減が起きた場合には、それに合わせて無理のない積立額に調整する必要がある。さらに、年齢や収入の変化、資産総額によって、リスク許容度も変化するため、それに合わせて最適な金融資産の持ち方を検討する必要がある。 「よく言われるのは、2、3年分の生活資金と教育資金・住宅購入資金などの目的の決まった資金は運用にはまわさないで残しておくのが望ましいということ。残りが投資運用資金になります。一般的に、若い世代ほど今後収入を得られる期間が長く収入が増える可能性も高いため、リスク許容度は高くなります。逆に年をとるほどリスク許容度は低くなります。一方で、資産総額が増えて投資に回せる余裕資金が増えると、その分リスク許容度が高くなる傾向もあります」 「暴落が不安」「今の銘柄でよいのか」。そんな不安を解消するには、まずは自分の資産状況の全体像を把握し、どの程度のリスクを許容できるのかを振り返るところから始めるのがよさそうだ。「保有していなくても気になる銘柄の基準価額のチャートを追って保有銘柄と比較してみたり、話題の企業の株価の推移を見てみたりすることでも、値動きの感覚をつかむことができ、漠然とした不安の解消につながるかもしれません」