TV局アナウンサーから難民支援の道へーーウクライナで1年、青山愛の今
──これからの世界で「異なる他者」が共存していくために、青山さん自身が大切だと思うことを教えてください。 相手を受け入れる勇気みたいなものでしょうか。やはり自分と違う考えやバックグラウンドを持っている相手は、初めはどこか怖い。もしかして自分が否定されるのではないかと。 特に難民の場合は、グローバルに見ても、これまでネガティブなステレオタイプで語られることが多かったと感じます。難民を受け入れると、自分たちの国にある既存のものが壊され、文化が変わったり仕事がとられたりしてしまうのではと。だから差別を受ける人も多いわけですが、やはりそうではなくて。 異なるからこそ、自分一人では到達できなかった新しい視点をもらえたり、これまで気づけなかった自分の強みを教えてもらえたり、新しい行動を起こすきっかけをもらえたり、享受できるものがたくさんあると思うんです。 つまり異なる他者は、社会を弱くするものではなく強くする。そんな風に捉え方を転換していけたら良いなと考えています。 ──特に日本の社会は、世間であるべきとされる価値観から少しでも踏み外すと、生きづらい側面もあります。 そうですね。ですが、ダイバーシティやインクルージョンなどの言葉がバズワードとなっているように、それぞれが異なる他者として輝ける社会は、すごく生きやすいと思うんです。どんな自分であっても受け入れてもらえて、自分なりの道を築くことができるから。 他者を受け入れることは、自分の存在が揺るがされることではなく、むしろそれぞれの人が自分らしさを発揮していく過程において必要なことだと思います。
──そうした社会にしていくために、これから取り組みたいことはありますか。 難民のみなさんと過ごす中で、「難民だから」と諦めたり、枠にはめられたりしてしまうのではなく、難しくても自分の可能性を信じて歩もうとする姿がとても印象に残っています。 私も昔は、自分がウクライナに来て、ミサイルやドローンの攻撃に耐えながら現地の方々に寄り添って仕事をすることなど、自分にできるとは思っていませんでした。でも、できないと思ってきたことをやることが、未来を切り開くのだと、今なら、実感できます。 だからこそ、この先も自分にリミットを設けず、誰かが光を見出して生きることに、少しでも貢献するような仕事ができればうれしいです。それが、私もまた異なる他者の一人として、自分らしく生きていくことにつながっていくのだと思います。