<北陸記者リポート>センバツ・北陸 文字や「宝物」を支えに /福井
34年ぶりのセンバツに向け、練習に汗を流す北陸ナイン。中には、帽子のつばに好きな文字を書き込みモチベーションを高める選手や、先輩から受け継いだ「宝物」と共に日々研さんを積む選手もいる。それぞれの思いを聞いてみた。【国本ようこ】 チームのエース、友広陸投手(2年)は昨夏の福井大会後、帽子のつばに「頂」の字を入れた。「自分たちが中心の新チームが始動したので、頂点を目指そうと思って」と説明する。「字がうまい」という稲葉陽士内野手(同)に書いてもらった。 その文字が支えになったのは、昨秋の北信越大会準決勝・福井商戦だ。先発し八回まで相手打線を1点に抑えた友広投手だが、3点リードで迎えた九回裏に、2死から連打を浴び1点差に追いつかれた。なおも一、二塁にランナーを残し、サヨナラ負けもありうる場面で、帽子を脱いで「頂」の文字を眺めた。「(頂点に立つという)目標達成のために、抑えないと」。気持ちを落ち着かせて、次の打者をピッチャーゴロに打ち取り、試合を終わらせた。「切り替えて勝負に挑めた」と笑顔で振り返る。 友広投手とバッテリーを組む平田海智捕手(同)も、同じく稲葉内野手に「要」と書いてもらった。「チームの要でありたい」という思いからだ。試合中はキャッチャーマスクをかぶるため、試合前などに見て気持ちを集中させるという。 山根慎之介内野手(同)が選んだ文字は「天夜叉(てんやしゃ)」。人気漫画「ONE PIECE(ワンピース)」に登場するキャラクターの別名で、「勝ちにこだわって戦うキャラなので、この文字を見て『勝とう!』と闘志を燃やしている」。 一方、昨夏に引退した憧れの先輩から引き継いだ野球用具で練習に励む選手もいる。昨夏の福井大会で活躍した先輩からもらったバットを使うのは、宮本健太郎内野手(同)。「たくさんヒットを打っていた先輩なので、あやかりたい」と説明する。宮脇隆之介外野手(同)は、入部当初から尊敬していた別の3年生が引退する際、グローブをもらった。「足が速くて肩も強く打撃もいい、かっこいい先輩。このグローブに見合うプレーをしないといけない思うと身が引き締まる」と明かす。 選手たちは4日から気候の温暖な徳島県へ旅立ち、現地の強豪校と練習試合をこなす。本番を前に臨む武者修行でも、帽子の文字や野球用具が支えとなるはずだ。