プライベートエクイティー会社が活用する借り入れ手段、監視の標的に
(ブルームバーグ): 英規制当局は、一部の大手銀行がプライベートエクイティー(PE)投資会社の債務積み増しをどのように支援しているかを調査している。8兆2000億ドル(約1174兆円)規模のPE投資業界で議論のある一角に光を当てる。
事情に詳しい関係者によると、イングランド銀行(英中央銀行)の健全性規制機構(PRA)は銀行に対し、PEファンドへの「ネット・アセット・バリュー(NAV)ローン」提供について、より多くの情報を提供するよう求めている。PRAは幾つかの銀行に対し、この種の貸し出しにどれだけの資本を投入しているか、またPEファンドのレバレッジをどの程度膨らませているかを質問しているという。
PRA報道官はコメントを控えた。
NAVローンは、PEファンドが所有している企業を担保として借り入れる。PEファンドは企業を買収する際に買収先企業の名義で資金を借り入れている。その企業を担保としたNAVローンは、レバレッジの層を重ねることになるため、その是非について議論がある。
NAVローンは10年以上前から存在していたが、最近のディールメーキングの低迷により多くのファンドは投資家に分配金を支払う手段として、こうしたローンを利用せざるを得なくなった。その結果、NAVローンの市場は近年爆発的に拡大し、現在では世界全体で約1000億ドルに達している。
銀行と業界の関係者の多くは、NAVローンは一般的にリスクに見合った適切な価格設定になっていると主張。また、NAVローンはPEファンドにとって、案件が乏しい中で流動性を管理する重要な手段だと論じている。
それでも、ファンド投資家を代表する団体、インスティテューショナル・リミテッド・パートナーズ・アソシエーション(ILPA)は、PE会社がファンドの資産を担保に借り入れを行う前に、投資家に注意を喚起すべきだと主張している。NAVローンで調達した資金で支払われた分配金が、後日にローン返済のためにクローバックされるリスクが懸念されているという。