野田元首相「党首討論のつもりで」菅首相に危機管理の姿勢ただす
●森会長発言問題は学術会議問題とは違う
「危機管理のテーマにもなってきた」として、森元首相の女性蔑視発言をめぐる一連の問題にも触れた。 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の会長である森氏の発言は国内外で批判を集め、撤回・謝罪に追い込まれたが、それでも事態は収まらず、森会長は2月12日に辞任を表明した。 野田氏は「最初からもっと総理は関わってよかったんじゃないか。なぜならば元総理と現総理の関係で、元総理の首に鈴をつけられるとしたら菅総理しかいなかったんじゃないかと思う」といさめた。さらに「組織への独立性の配慮もあったかもしれないが、これは学術会議の問題とは違う。内閣総理大臣は組織委員会の顧問会議の議長で、もともと大所高所からアドバイスできる立場だ。こんな大事な局面では、きちっとアドバイスするのが顧問会議議長の役割ではないか」と主張した。 森氏の後任としては、正式な辞任表明の前から元日本サッカー協会会長の川淵三郎氏が取り沙汰された。ただこの人事案の報道直後から批判が殺到し、翌日に川淵氏は選考を辞退することになった。 菅首相は「後継問題について、森会長から辞任すると直接報告があった。それ以外のことについて、知らないうちにどんどん理事会もなく決まったような報道が流れたので、国民の皆さんに歓迎される五輪にするために、理事会の前に決められるのは避けるべきだと、しっかりと透明にルールに基づいて選考してほしいという趣旨を私から強く申し上げた」と経緯の一端を明かした。 野田氏は、2019年に放送されたNHK大河ドラマ「いだてん」を持ち出し、森会長発言を「残念な発言だった」と断じた。ドラマでは日本人女性として初めて五輪に出場しメダリストになった人見絹枝さんら女性スポーツの黎明期が描かれており「視聴率は低かったが、すばらしい大河だった」と称賛。「森会長は『いだてん』を見ていなかったのか」と述べた。
●財政健全化の道筋を国民に示すべき
野田氏は首相時代の2012年、税と社会保障の一体改革を掲げて自民党・公明党と合意し、現在の消費税10%への道筋をつけた人物でもある。質疑の最後は、菅首相の財政論を問うた。 日本の財政状況について、コロナ禍での3度にわたる補正予算編成によって極度に「歳出と税収の差が広がってきた」と懸念。医療機関への支援や特別給付金、家賃補助など「財政出動はやむを得ない」との見方を示した一方で、「財政も緊急事態である」ことを国民に説明することも必要だと訴えた。具体的には今年の「骨太の方針」に財政健全化への道筋を示すべきだとした。 菅首相は「私自身の内閣の基本姿勢は、やはり『経済あっての財政』で今は進めていくべきだという考え方。当面は(コロナ)感染症対策に全力で取り組む」と成長思考の経済再生を進めるとの姿勢を示した上で、「財政健全化の旗も降ろさず、骨太の方針に向けてしっかりと議論していきたい」と答えた。 続けて野田氏は、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化目標を骨太の方針に記す意思があるかを追及したが、そこに西村康稔(やすとし)経済再生担当相が発言を求め挙手した。 「党首討論のつもりでやっている。(西村氏は)総理を目指しているのかもしれないが、勘弁してください」。そういなして、日銀が国債を多数引き受けている現状を「財政ファイナンスだ」と指摘し、菅首相に是正を求めた。