消費税は本当に社会保障に回るのか? 早稲田塾講師・坂東太郎の時事用語
今年の4月から消費税率が8%に引き上げられます。消費税を上げる最大の理由は、国と地方の借金の合計が1000兆円を超えていて先進国最悪という事態を少しでも和らげたいからです。そうでなくても国の1年分の歳入(収入)のうち約半分が借金です。要するに毎年毎年、借金生活をしつつ外側にどえらい大借金があり、少しでも返していくメドを立てないとカネのやりくりがつかなくなって「国の倒産」になりかねないのです。
かさみ続ける年金・医療費
借金を返そうと考えたら、(1)収入を増やす努力をする、(2)歳出(支出)のなかで大きなものから見直していく、が大原則なのは家計も国家財政も同じ。(1)が消費税増税で(2)が社会保障費です。 社会保障費の内訳で「大物」なのは年金、医療で8割ほどを占めます。人口構成比で今ですら4分の1を占める高齢化は今後さらに進むのが確実。年金は高齢者の命綱で、年を取るほど病気になりやすいのも自明なので医療費もかさみます。近年では社会保障費は毎年1兆円ずつ増えてきました。2014年度予算案ではさまざまな抑制策を使って6000億円程度に押さえつけたものの、増加傾向は止めようがありません。
なぜ消費税が選ばれた?
ではなぜその対策にさまざまある税のなかから消費税が選ばれたのでしょうか。よく勘違いされがちなポイントですが、端的にいえば「それならば高齢者からも取れるから」です。社会保障費増の主因である高齢者からの負担も見込めるので相性がいいわけです。 例えば所得税(収入の約15%)は現役世代からしか徴収できません。会社にかける法人税(同約10%)も重くしたら企業経営に負担が生じ、めぐりめぐって働き手の給与に響きます。その点で消費税(同11.5%=5%時)は買い物客の年齢がいくつであっても関係ありません。現に初めて導入した1989年(税率3%)と5%に引き上げた1997年には所得減税も合わせて行いました。2014年4月からの8%(3%増)の議論でほとんど出てこなかったのは、もはや他の税を下げる余裕がないところまで追いつめられたからでしょう。 したがって消費税増税分は引き上げ法が決まった直後の2013年8月に当時の野田佳彦首相が「増税分は社会保障に使う」と明言しています。