低山でなぜ登山事故? 山歩きライター岡弘さんに聞く
山ガールからシニアハイカーまで幅広い世代が山歩きの魅力にひかれ、都市近郊の山々がにぎわっている。半面、さほど難しくないコースで登山事故が相次ぐ。安全なはずの低山で、なぜ事故が起きるのか。関西の山々を知り抜いた山歩きライター岡弘俊己(としき)さんに、低山ハイキングを安全に楽しむための心構えや注意点を聞いた。
登山コースの点検で年間100日間山歩き
岡弘さんは読者の利便性を重視した誠実な取材ぶりで知られる。4月、「関西気軽にハイキング」「関西日帰りの山ベスト100」(いずれも実業之日本社刊、ブルーガイド山旅ブックス)を同時に出版したばかりだ。 2冊で150あまりの山を紹介しているが、電車やバスなど、公共交通機関を利用して登山口まで出かけることができるコースばかりを選んだ。そのうえで、基本コースに慣れ親しんだらチャレンジしてみたい中級者向けのオプションコースの設定し、下山後に汗を流せる温泉情報などを、きめ細かく盛り込む。 毎年、50日間から100日間ほど、関西一円の山々を歩く。修行僧の百日回峰を何年も継続しているような趣だ。何をしているのか。岡弘さんは「コースの点検です」と話す。 「数年来の集中豪雨や台風被害に伴い、全国至るところで登山道が荒れ、関西も例外ではない。六甲山系など人気コースでありながら土砂崩れで通行止めになったり、コースの変更を余儀なくされるケースが発生している。状況が気になる登山道を随時歩いて点検し、ガイドブックの発行や改訂時に正確な情報を提供することが、山歩きライターの使命と考えています」 4月の新刊でも「登山道崩壊、復旧工事中、2015年1月現在」(奈良・三重県境に広がる高見山)などの最新情報で、登山客に注意を喚起する。
安全な登山の3要素は「準備」「情報」「体力」
岡弘さんによると、安全な登山の3要素は準備、情報、体力。ひとつでも不足すると、事故が生じかねない。 準備面では、救助サインを出すホイッスル、国土地理院発行2万5千分の1の地形図、十分な水分を、必ず準備したい。岡弘さんは水、お茶、スポーツドリンクの3種類の水分を持ち歩く。けがをした場合、傷口を消毒する真水が必要だという。夏場にかけて、ヤブカを追い払えるうちわがあると便利だ。 岡弘さんは簡易コンロや携帯食糧も常備。地震などの災害発生時に、ザックごと持ち出せば、防災グッズとして活用できるという。