政党として生き残れるのか――最大危機の社民党 77年間の栄枯盛衰と参院選への秘策
社会党時代を含めて77年の歴史を誇り、首相も出した老舗政党が大ピンチだ。社民党は次の参院選で一定の票数を確保できないと公職選挙法の「政党要件」を失う。改選を迎える福島瑞穂党首は「正念場の選挙」と危機感を募らせるが、社民は野党の中でも埋没気味だ。政党として生き残れるのか? 前身の社会党を含めたこれまでを振り返るとともに、参院選への秘策を探った。(ジャーナリスト・小川匡則/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
参院選で「得票率2%」が条件
社民党の福島党首は新宿駅西口に現れると、おもむろに街頭演説を始めた。 「福島瑞穂は言いたい。憲法を無視して、憲法を尊重せず、憲法を全く考えない人たちに憲法を変える資格はないと思います!」 5月のゴールデンウィークのさなかで多くの人が行き交うが、聴衆はまばら。それでも30分にわたりマイクを握り、訴えを続けた。 社民党は2020年に立憲民主党との合流をめぐり分裂したこともあり、現在所属の国会議員は福島氏と衆院議員1人のみだ。存在感の薄さは否めない。 公選法の政党要件は、「所属の国会議員5人以上」もしくは「直近の衆院選か参院選で有効投票総数の2%以上の得票」を満たす必要がある。今回の参院選で4人の当選は難しく、焦点は「2%」のほうになる。社民党は3年前の参院選の得票率は2.09%だったが、昨年の衆院選は1.77%と2%を下回った。このため、今回の参院選(比例区)は「得票率2%以上」が"至上命令"となる。120万票以上が必要だ。 政党要件を失うと、次期衆院選で小選挙区と比例代表の重複立候補ができず、選挙区候補が政見放送を流せないなど、活動が大きく制限される。 福島党首は比例区で立候補予定で、「社民党にとって厳しい選挙になるが、何としても得票率2%を達成しなければならない」と力をこめる。
55年体制で存在感
社民党の前身、日本社会党は戦前間もない1945年11月に結成された。47年には片山連立内閣が誕生。その後、党内で左派と右派が分裂するも、55年に再統一する。同年には、自由党と日本民主党の保守合同で「自民党」も誕生し、「55年体制」が始まった。 社会党は庶民や労働者の側に立ち、「護憲・平和・安保反対」を掲げた。特に自衛隊については非武装・中立を理想とし、違憲の立場をとった。政権与党に歯止めをかける野党第1党として支持を集め、50年代後半には衆参で約250人の大所帯だった。 「社会党には戦争に対する反省心というのが根底にあり、人材も豊富だった」と話すのは、自民党や新党さきがけなどに所属した田中秀征・元経済企画庁長官だ。 朝鮮戦争の勃発により、アメリカが日本を戦争しない国から強い国にしようと対日政策を変更したため、国民の意識が「社会党を強くして戦前に戻らないようにしよう」となったことも大きかったと指摘する。