文科省にダメ出し、残業代出ない「給特法」条件付き財務省案の見落とし 財務省案vs.文科省案、双方に問題がある理由
やらなくていいことを示すだけでは変わらない
とはいえ、学校現場からは次のような声、反論が聞こえて来るだろう。 ・いくら学校(ないし教員)がやらなくてもいいと、国に言われても、代わりにやってくれる人がいないんですよ。例えば、試験監督に誰か人を寄こしてくれるんですか? 文書や方針だけ示しても、変わらないんです。 ・教員にとって一番メンタル的にもしんどくて、やりがいを感じないことは、一部の保護者等による理不尽なクレームや叱責です。これは学校が対応しなくていい、と国が示してくれるのは歓迎ですが、学校外の人(例えば教育委員会や弁護士)が最後まできちんと面倒をみてくれないと、私たちとしては、放っておけません。なぜなら、保護者の怒りは子どもにも向かってしまいます。その子のことが心配だし、家庭の問題は学級での荒れや問題行動にもつながっていきます。 「チーム学校」などとは呼ばれながらも、教員と事務職員以外の職の大多数は非常勤職のままだ。雇用も不安定だし(東京都でカウンセラーの大量の雇い止めが報じられた)、「ソーシャルワーカー(あるいはICT支援員)さんが次に来てくれるのは再来週です」みたいな状況なので、重たい事案ほど教員の手からは離せない。 私は、今回の財務省案を活用して、「チーム学校」がもっと機能するように、学校内に常勤の専門職や支援員を増やすことが重要だと思う。中学校区などに常駐してもらって頻繁に支援できるようにするなどもいいだろう。 ただし、財務省の(3)の指摘のように、自治体(教育委員会)が人員配置を怠ってきた問題もある。事務職員や用務員の配置増は、副校長・教頭の負担軽減にもつながるはずだ。 さらに、要約には含めなかったが、産育休の代替人員として正規職を採用した場合も国庫負担にしてよいなど、むしろ財務省にとっては予算増となるアイデアまで含めているのはこれまでになく、学校現場に寄り添っていると思う。 こうした学校業務の抜本的な縮減や、教員に頼りすぎない体制整備、産育休代替の財政支援などについては、文科省は、財務省の提案を採り入れるなどして、政府として強力に推進してほしい。