[特集/アジアカップのその先は? 02]技巧派のカタール、空中戦のイラン、瞬発力のヨルダン…… キャラクター際立つアジアの最新勢力図
ロングボール戦法で異彩を放ったイラン
キャラクターで異彩を放っていたのがイランだった。地域的には中東勢なのだが、他とは明らかにプレイスタイルが異なっているのだ。中東といえばサウジアラビアやカタールに代表されるように技巧的でパスをつないでいくスタイルなのだが、イランはFWめがけてのロングボールと空中戦がメイン。これはイランの伝統でもあり、他の中東勢よりも体格も大きく高さと重さを持っている。かつての大エース、アリ・ダエイが君臨していたころから空中戦は得意だった。ただ、以前までのようなサイドからのハイクロスではなく、DFからのロングボールで高さを使っていたのは今大会の特徴かもしれない。 このイランのプレイスタイルが奏功したのが準々決勝の日本戦だった。 日本が前線からプレッシングを仕掛けようとすると、すかさず最前列までロングボールを飛ばし、高さを活かして競り落としたボールを拾って、チャンスを作っていった。ある意味、原始的ともいえる戦法だが日本に対して有効だったのは間違いない。また、日本とは対照的な戦い方でもあった。 パスをつないで攻め込もうとするチームの多くは、相手が守っていない場所へボールをつないでいく。およそボールはサイドへ行き着くので、そこで1対1に勝てるタレントがいるかどうかが成否を左右する。今回の日本は伊東純也を大会途中で失い、三笘薫が負傷のためにベストコンディションではなく、いわば飛車角落ちの状態だったのが響いた。 一方、イランはCBを直接攻撃する。相手が守っている場所、つまりCBを攻略することがゴールへの最短ルートだからだ。イランのロングボール攻撃は大雑把であり何の意外性もないが、相手のCBを攻撃して攻略している点において、日本の迂回攻撃よりずっと迫力があり、合理的でもあった。 かつてはオーストラリアがイランと似たキャラクターを持っていた。しかし、ポステコグルー監督に率いられて優勝した2015年大会では、すっかり様変わりしてモダンな攻撃型スタイルになっていた。もはやロングボール戦法主体のスタイルはイランだけになっている。