[特集/アジアカップのその先は? 02]技巧派のカタール、空中戦のイラン、瞬発力のヨルダン…… キャラクター際立つアジアの最新勢力図
中東勢は時代の流れで強化。国際経験が今後の課題か
決勝のカードがカタール対ヨルダンだったことに象徴されるように、今大会は中東勢の強さが目立っていた。 連覇達成のカタールは中東勢の変化やキャラクターを体現するチームといえる。有名なアスパイア・アカデミーに代表されるように育成に力を入れてきた。国策的強化はワールドカップ開催が背景にあったわけだが、そもそもワールドカップ開催そのものが国策なのだ。中東諸国はエネルギー産業の衰退を予期し、エンタテインメント産業など次世代への投資を行っている。カタールのワールドカップ開催やサウジアラビアの欧州スター選手の引き抜きなども、その流れの中にある。欧州サッカーの今日の隆盛も、カタール、サウジアラビア、UAEのマネーに支えられてのものだ。 ともあれ、カタール、サウジアラビア、UAEがサッカーに本腰を入れてきた。育成過程では欧州からの指導者、理論を採り入れていて戦術的に洗練。もともと持っていた個々のテクニックに加え、弱点だった戦術面の整理や体力の向上がもたらされ、レベルアップしている。 優勝したカタールは変則的なシステムだった。[4-2-3-1]の右サイドハーフがSBに下がって5バック化する。片側だけがワーキングウインガーという、ブラジルの昔懐かしい形に近い。戦術上の運用が洗練されてきたわけだが、それ以上に育成を背景として優れた人材を生み出している。 大会得点王とMVPを受賞したアクラム・アフィーフは主に左ウイングとしてプレイした。トリッキーなアイデア、絶妙なボールタッチとスピードを持つ。文句なしの大会ベストプレイヤーだった。前回大会得点王のアルモエズ・アリ、そして今回のアフィーフのような逸材が現れているのが大きい。 中東勢の弱点は国際経験の乏しさだろう。カタールは以前からコパ・アメリカに出場するなど、積極的に国際試合を続けてきた。ただ、ほとんどの選手は国内リーグでプレイしている。欧州サッカーの強度を日常的に体験しているわけではなく、そこをどう克服していくかは今後の課題になりそうだ。