世界最大の原発、柏崎刈羽再稼働で軋轢-エネルギー問題緩和期待も
(ブルームバーグ): 新潟県中越地方。豪雪と酒造りで知られるこの地域には世界最大の原子力発電所がある。
柏崎市と刈羽村にまたがる約420万平方メートルという海沿いの広大な敷地に建つ東京電力ホールディングスの柏崎刈羽原子力発電所は、かつて2030年までに原子力を電源構成の50%に引き上げようとしていた日本のエネルギー戦略の要とも言うべき存在だった。施設内にはギネス世界記録の証明書が掲げられ、この施設の総出力約820万キロワットが世界一であることを示している。
施設全体では約1300万世帯以上の生活を賄うに十分な出力を持つこの原発は現在、電力を生み出していない。柏崎刈羽の7基の原子炉は、11年の東日本大震災に伴う福島第一原発の事故の後、停止したままだからだ。
各地で原発が停止した結果、資源に乏しい日本は多大なコストを負っている。昨年の石炭や液化天然ガス(LNG)などのエネルギー資源輸入額は約27兆円。日本の家庭や企業は、電力消費のピーク時に節電に追われるようになった。化石燃料への依存にもつながり、気候変動への対応という公約を手の届かないものにする恐れも出ている。
現在、日本が半導体工場やエネルギーを大量に消費する人工知能(AI)データセンターの誘致などを通じて経済成長を目指す中、福島の原発事故を防ぐことができなかった東電HDに原発の再稼働を許すべきかについての議論が活発化している。
原子力見直しの機運が高まっているのは日本だけではない。国際原子力機関(IAEA)は、想定シナリオの一つで原子力による発電容量は22年の水準から30年までに24%、50年までに140%増加すると予測する。少なくとも15カ国が新しい原子炉を建設中であり、その筆頭が中国だ。インドは30年代初頭までに原子力発電能力を3倍にしたいと考えている。石油大国のサウジアラビアも民生用原子力プログラムの構築についてアメリカと協議中だ。