葬儀業界の人手不足が顕在化、希望日に葬儀できず、遺体取り違えて火葬も 倒産は過去最多
葬儀業界の人手不足が際立ってきた。高齢化に伴い死亡者が増加する「多死社会」を迎える中、葬儀件数の急増に葬儀社の従業員数が追い付いていない状況だ。人手不足からか、葬祭場に空きがあっても葬儀が行えなかったり、遺体を取り違えて出棺するという〝あり得ないミス〟まで発生している。人の死に触れる葬儀業界は過酷な職場イメージからか採用が難しく、慢性的な人手不足による葬儀社の倒産も過去最多のペースで増えている。 【写真】「宮型霊柩車」絶滅の危機 派手な葬送を敬遠され、火葬場出入り禁止の自治体も ■相次ぐ葬儀社の不祥事 「葬儀社として考えられないミス。ただ、業界の現状を考えれば、このミスを他山の石とするべきだろう」。ある関西の葬儀社は気を引き締める。 今年3月。葬祭業「ティア」(名古屋市)が埼玉県越谷市で運営する葬儀場「ティア越谷」で、男女2人の遺体を取り違えて出棺するミスが発覚した。遺灰の中に見覚えのない遺品があったことから、取り違えが判明。「名札などの確認を怠り、現場担当者の完全な思い込みによるミス」(同社の辻耕平専務)だった。 2023年4月には同社のフランチャイズ加盟店の従業員が、香典袋に入っていた現金12万円を盗んだとして逮捕される事件も発生。同社以外でも同様の不祥事は全国で散見されており、激務な職場環境や人手不足による従業員のプロ意識やサービスの低下が起因しているとみる向きもある。 ■葬儀は急増、従業者横ばい 実際、葬儀業の人手不足は顕在化している。経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」によれば、13年に42万3503件だった葬儀取扱件数は、23年に50万件を超えて過去最多を記録。この10年間で約2割も増加した。 その一方で、正社員やパートなどを含めた葬儀社の従業者数は、13年に2万2384人だったが、23年は2万3194人で、ほぼ横ばいだ。「葬儀場に空きがあっても、人手不足で通夜や葬儀ができない事例も散見されている。葬儀が重なり、3日徹夜させられるような職場環境の葬儀社もある」(調査会社関係者)という。 さらに、23年の葬儀業の売上高は5944億円で、13年の5984億円から減少しており、葬儀の低価格化も顕著になった。