ゲーテへの想いが込められた非業の作品。ベルリオーズの『ファウストの劫罰』【クラシック今日は何の日?】
クラシックソムリエが語る「名曲物語365」
難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。
ベルリオーズ『ファウストの劫罰』 ゲーテへの想いが込められた非業の作品
今日8月28日は、ドイツの文豪、ゲーテ(1749~1832)の誕生日です。 イギリスの劇作家シェイクスピアと共に、クラシック音楽の世界に最も大きな影響を与えた人物ゲーテ。シューベルトの歌曲『魔王』や、ベートーヴェンの劇付随音楽『エグモント』に、マスネのオペラ『ウェルテル』など、彼の作品を題材とした名曲は枚挙に暇がありません。 フランス・ロマン派の作曲家ベルリオーズ(1803~69)の『ファウストの劫罰』もそのひとつ。 ゲーテの『ファウスト』フランス語訳に魅了されたベルリオーズは、この作品を音楽にしようと決意します。早速『ファウストからの八つの情景』を作曲して自費出版し、ゲーテに贈呈したところが、知り合いの音楽家ツェルターの否定的な意見に賛同したゲーテは、総譜をベルリオーズの元に返してしまったというのですから悲惨です。 20年ほど後に、再び『ファウスト』への想いが再燃したベルリオーズは、劇的物語『ファウストの劫罰』を完成させますが、作品が評価されるようになったのは、ベルリオーズがこの世を去ってからのことでした。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。
家庭画報.com