「余分なものを削いでいく」岡山天音が語る「声で、言葉で伝える」ということ
読み返す度に新しい発見がある村上作品
――以前から、村上春樹さんの作品に親しんできたそうですね。 「母親が村上春樹さんの作品が好きで、子どもの頃から僕もなんとなく手に取るような環境でした。当時は文章の読み心地のよさ、かっこよさに惹かれて読んでいましたが、読む度に核のようなものが奥にある面白さがあります。 現実に即したモチーフが数多く出てくるんですが、その具体がメタファーになっていて、また別の具体が描かれているというのかな。いろいろと知らないことが多い子ども時代でも十分面白かったけれど、大人になって読み返す度に新しい発見に出会えるのも魅力です。 『海辺のカフカ』は小説で読んだ後に、舞台化されたのを観て、原作ではキャッチできなかった強い芯みたいなものを改めて感じることができました。表現方法が変わることで受け取り方も変わりますし、年齢を重ねることや体験を得る以前と以後でもキャッチできる鮮明さは変わってくる。折に触れて読み返す理由もそこにあるのかもしれません」 ――『1973年のピンボール』は、出会いや別れ、日常にある閉塞感や輝かしくはないながらも青春時代を描いた作品。岡山さんが“青春”と聞いて蘇る感情や光景はありますか? 「うーん、ないですね。なかったからこそ、今からどんどん増やしていきたいと思っています」 ――青春は10代、20代の特権と思われがちですが、そんなことはないですしね。 「そうですね。30歳になったら節目だとかもですけど、刷り込まれている部分はあるかもしれません。そういった側面がないわけじゃないけれど、過剰に刷り込まれて自分からその檻の中に入ってしまうこともあるように思います」
『キングダム』の撮影中は部活のようだった
――現在ちょうど30歳。大人になってから青春を感じた瞬間はありますか? 「まさに仕事をしているときに青春を感じています。たとえば台本があって、このキャラクターを最終的にどういう風に世の中に提示していくかを考えるときに、現場でいろいろな人と話し合って、それぞれの意見を持ち寄って、みんなで突き進んでいくときに感じたりしますね。 正解なんてわからないし、真っ暗な中で出口がどこにあるかわからなくてがむしゃらで、そこには喜怒哀楽が溢れていて、心身ともにヘロヘロになるんですけど、清々しいというか。 映画『キングダム』シリーズでは、隊を組んで、周りは男だらけの状態で泥にまみれて戦うシーンを撮影し続けてきたんです。季節も移り変わって、場所も変わっていくけれど、周りにいる隊のメンバーだけはずっと一緒で、学生時代の部活のような感覚。『明日も朝早いけどがんばろうな!』って声を掛け合ったりして青春してるなって感じでした」