「余分なものを削いでいく」岡山天音が語る「声で、言葉で伝える」ということ
2024年だけでもドラマ6本、映画5本に出演。どの作品で出会うかで、抱く印象が全く違ったものになる俳優の岡山天音さん。理屈抜きに優れた演技力によって俳優として求め続けられる今、朗読という新たなジャンルでの挑戦が訪れました。 【写真】『ライオンの隠れ家』出演で話題の岡山天音、全身黒の着こなしでクールに 音声エンターテインメントサービスAudibleにて、岡山さんがナレーターを務める村上春樹さんの小説『1973年のピンボール』の配信が12月17日よりスタート。一人の読み手として、村上春樹の世界、そして名著にどのように向き合ったのか。また作品を声で紡ぐこと、岡山さん自身の青春についてお聞きしました。
村上春樹の世界観に浸れる絶好の機会
――演技でも声優でもなく“朗読”のオファーが届いたときの率直な気持ちを教えてください。 「音声での媒体が新しく出てきているというのは知っていましたし、耳にしたこともあったんですけど、いざ自分がやるとなると『できるのかな?』と当初は不安がありました。一冊の小説を一人で読み切るためには、どれほどのエネルギーが必要なんだろうと想像がつかなくて。 ただ、同じ事務所の岸井ゆきのさんが川上未映子さんの作品を朗読されたという話を聞いていましたし、何よりも以前から読ませていただいてきた村上春樹さんの作品であることがとても光栄でした。どっぷり世界観に浸からせてもらう絶好の機会だなと思って、楽しみが勝りました」 岡山天音(おかやま・あまね) 1994年6月17日生まれ。東京都出身。2009年、俳優デビュー。直近の出演作に、映画『笑いのカイブツ』『ある閉ざされた雪の山荘で』『Cloud クラウド』『十一人の賊軍』『アット・ザ・ベンチ』、ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』『ライオンの隠れ家』などがある。今後、映画『アンダーザニンジャ』『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』の公開を控える。
できるかぎり“無色”であるように表現
――何か特別な準備はされたのでしょうか。 「普段、映像でお芝居する上では、キャラクターというものがあって、そこに対して『どういう色合いがいいんだろう?』と自分なりにイメージを彩っていく作業があります。俳優としての個人的なこだわりですが、できるかぎり今まであまり使ったことのない色の絵の具を使いたいし、色を混ぜ合わせて新しいものを生み出していく感覚があるんです。 けれど今回、『1973年のピンボール』を朗読するにあたっては、題材も文章もとても美しく、具体をすべて明示して何かを伝えていく作風のものではないように思えて、朗読も表現ではあるんですが、できるかぎり無色であることがこの作品としては正しいような気がしました。 自分が色づけてしまうことで、既定してしまったり、言い切ってしまわないように、むしろ余分なものをできるだけ削いでいく。聞かれる方がさまざまな感情や記憶などを重ねられる声になればいいなと思ってやっていたので、そういった意味では映像とは反対の準備だったかもしれません。それが成立するのも、村上春樹さんの文章が強く、美しいからに他ならないです」