なぜバドミントン日本代表は強くなったのか? 成果上げた朴柱奉ヘッドコーチの20年と新時代
パリでも別の理由で再びの合宿不足
2024年パリ五輪でも、似たような問題が起きていた。コロナ禍はすっかり明けていたが、今度は2022年に起きたバドミントン協会職員による横領と隠蔽に端を発する強化費削減が大きく響いた。 パリに向けての日本代表合宿が「予算不足」により立て続けに中止になる異例の事態。 2大会続けて、日本の強みだった合宿による集中強化、代表内の競争による心身の調整が行えない状態に陥った。 結局、“シダマツ”、“ワタガシ”が銅メダルを獲得したものの東京のリベンジと意気込んで挑んだ日本代表としては悔しさが残る結果に終わった。
つなぐものと変えるもの 新時代に向かって
2024年、朴は20年続けた日本代表のヘッドコーチの職を辞すことを決めた。 朴が築いた「代表合宿を軸とした一体感」のモデルは大きな成果を挙げた。しかし、さまざまな不運はあったとはいえ、選手個々が世界ランキングの上位に名を連ね、国際大会で優勝を狙えるような強豪に成長した現在、すべてを日本代表、NTCのコートに集約するのは難しくなっていた。 実際に日本代表の合宿が長期にわたることに「もう少し環境の変化があってもいい」と語る選手もいた。選手が主体性を持って自分のチームを持ち、世界と戦う展開も今後あるかもしれない。 2025年からは、富岡高校で桃田や渡辺、東野を育てた大堀均がヘッドコーチに就任する。日本代表に大きな変化をもたらした朴は、引き続きアドバイザーとして日本代表をサポートするのは心強いが、日本のバドミントン界が次のステップに進むためには、20年の試行錯誤と改革を礎にそこで得た教訓を生かして、次の改革を始める必要がある。 予算繰りに今後も苦労しそうな点は懸念材料だが、協会の体制にも改革が進み、“見る競技”としてのバドミントンの価値を高める動きも活発化していくはずだ。 女子ダブルスコーチにロンドン五輪で銀メダルを獲得した“フジガキ”ペアの藤井瑞希が就任するなど、プレイヤーとして世界を知る世代が指導に当たることへの期待は大きい。 <了>
文=大塚一樹