第171回芥川賞は朝比奈秋さん「サンショウウオの四十九日」と松永K三蔵さん「バリ山行」、直木賞は一穂ミチさん「ツミデミック」に
第171回芥川賞は朝比奈秋さん「サンショウウオの四十九日」と松永K三蔵さん「バリ山行」、直木賞は一穂ミチさん「ツミデミック」に
日本文学振興会は17日、第171回芥川賞・直木賞の受賞作を発表した。芥川賞は朝比奈秋さん(43)の「サンショウウオの四十九日」と松永K三蔵さん(44)の「バリ山行」、直木賞は一穂ミチさん(46)の「ツミデミック」に決まった。 【動画】第171回「芥川賞・直木賞」発表 芥川賞は朝比奈秋さんと松永K三蔵さん、直木賞は一穂ミチさん(2024年7月17日)
朝比奈さん「大きな賞をもらうより難しいのが書き続けること」
芥川賞の朝比奈さんは、初ノミネートでの受賞。受賞者発表のあと、都内で開かれた記者会見で、朝比奈さんは「これほど多くの選考委員に読まれて議論の対象となること自体、大変光栄。今後選評をよく読んで、自分自身の小説に対する理解を深めていければ」と語った。 「受賞作を書き始めたのは多分、5、6年前。この間、僕自身いろんな経験をし、いろんな作品を書くうちに、生きるとは、体とは、精神とは、自我とは、意識とはといったものに対して理解を深めることができ、その理解の中でようやくこの小説を書き上げることができ、ホッとしています」と振り返る。 受賞作には、体が結合した「結合双生児」の姉妹が登場する。「我が身のことと考え、自分の体を感じているうちに、たとえ体がつながっていなくても、人間は心底でみんなつながっているんじゃないかという感覚を得られて、そこからは自分のこととして書くことができた」と朝比奈さん。今後について「大きな賞をもらうより難しいのが書き続けること。どんな小説でもいい、評価されなくてもいいので書き続けることに挑戦したい」と抱負を述べた。
松永さん「純文学だからといって難解である必要はない」
朝比奈さんと同じく、初ノミネートで受賞した松永さんは、「大変光栄です。ただ感謝、感謝の気持ちでいっぱい」と担当編集者など関係者に感謝。受賞作で書きたかったことについては、「ままならない社会や世界の中でいかに生きていくか。そういう個人の挑戦と葛藤が書きたい1つのテーマです」と語った。 記者会見に際して、胸の部分に「オモロイ純文運動」という文字をプリントしたTシャツを着て登壇した。2021年にデビューして以降、この運動に一人で取り組んできたという。「純文学だからといって難解である必要はない」、「純文学にはいろんな形があり、面白さがあるが、私の作品はわかりやすいと思うので、入門編にしていただければ」と松永さん。 今回の受賞を受けて、「書くことは(今後も)変わらないが、書く幅を広げて、より人間、そして世界への問いというものを深めて、面白い純文学を描いていきたい」と力を込めた。