第171回芥川賞は朝比奈秋さん「サンショウウオの四十九日」と松永K三蔵さん「バリ山行」、直木賞は一穂ミチさん「ツミデミック」に
一穂さん「パンデミック下でなければ生まれなかった小説」
直木賞の一穂さんは、3回目のノミネートでの受賞。会見の冒頭で、「(受賞の連絡を)待っている間、緊張に耐えかねて6時ぐらいにビールを飲んでしまったことへの後悔、そして高齢の母がいるので冥途のみやげに何とか間に合った、という安堵でいっぱいです」とユーモラスに切り出した。 受賞作は、コロナ禍の人々を描く短編集。「閉塞感の中で書いた作品もあれば、ウィズコロナの方向性が見えてきた時期に書いた作品もあります。後に書いたものほど明るい話になったりしたので、リアルタイムのパンデミック下でなければ生まれなかった小説」と語った。 次作は「広い意味での恋愛小説。自分の中では毎回前と違ったチャレンジをしよう、今の自分にとって難しいことをしようと考えているので、また違ったものをお見せできれば」と一穂さん。最後に、「言いたいことは、これからも、今までも、紙の中に自分の言葉としてあります。物語の中でまた、皆さんと出会えたら幸せです」と語り、会見を終えた。 (取材・文:具志堅浩二)