「富士山ローソン」の黒幕はオーバーツーリズム対策に一石 財政負担増す自治体に名案なく
山梨県富士河口湖町のコンビニの上に富士山がのったような写真が撮れる撮影スポット「富士山ローソン」の黒い目隠し幕設置はオーバーツーリズム(観光公害)を象徴する事案として、国内外で注目を浴びた。「マナー違反が目立つ中で仕方ない」といった肯定的な意見が多いが、〝観光名所〟をなくす措置に「この地域に来ないでほしいというメッセージになる」との懸念や批判もある。ただ、今回の異例の措置は、有効な手立てが見つからないオーバーツーリズム対策に一石を投じることになった。 【写真】目隠し幕にあけられた小さな穴を通してスマホで富士山ローソンを撮影する外国人観光客の姿も ■大幅に人減り、改善傾向も 「観光客と住民の安全やプライバシーを守るための対策だ。苦渋の決断だったが妥当な措置だ」 「ローソン河口湖駅前店」の富士山ローソンの目隠し幕の設置が完了した3日後の5月24日の記者会見で、富士河口湖町の渡辺英之町長は措置の意義を強調した。幕設置で富士山ローソン撮影のため、観光客が殺到していた道路反対側では「大幅に人が減り、改善に向かっている」と成果も示した。新たに目隠し幕にQRコードをつけて、町内の他の撮影スポットへ誘導していく。 ■イタチごっこは続く とはいえ、設置直後から幕には約1センチ程度の穴が開けられ、そこにスマートフォンのカメラを使って、富士山ローソンを撮影するケースも目立つ。 幕設置後は河口湖駅前店と同じようなコンビニの上に富士山が乗っているような写真が撮れる「ローソン富士河口湖町役場前店」に外国人観光客が流れ、道路にはみ出たり、民家の敷地に入ったりして撮影するなど、マナーの問題が発生。「外国人観光客と対策のイタチごっこ」(地元住人)が続く状況ともなっている。 富士山ローソン同様に、昭和レトロな商店街の向こうに富士山を望む景色が交流サイト(SNS)で〝バズった〟富士吉田市の「本町二丁目交差点」。今や多い日には撮影のため1日5千人近くが訪れる中で、市はオーバーツーリズム対策の一環として、付近に公衆トイレ付の駐車場を約1億円を投じ新設した。 さらに、同交差点で車道に出て撮影する観光客対策で複数の警備員を配置せざるを得ず、年間2億円程度の経費が必要になる。ともに大きな財政的負担だが、オーバーツーリズムの抜本対策に至ってはいないと自省する状況だ。