「富士山ローソン」の黒幕はオーバーツーリズム対策に一石 財政負担増す自治体に名案なく
■ナビ技術進化が背景に
観光政策に詳しい日本総合研究所調査部の高坂晶子主任研究員は、「かつてはメジャーな観光地巡りが中心だったが、『暮らすように旅をする』といわれるように、旅先の生活体験を重視するスタイルが増えている」と変化を指摘。SNSで簡単に〝バズる〟と同時に、ナビゲーション技術の進化で「地理に不案内でもすぐに行ける環境ができ、想定していない場所でも観光客が一気に集中してしまう」とオーバーツーリズム増加のメカニズムを解説する。
それゆえに富士山や京都などの観光名所に限ったことでなく、「どこで問題が起きてもおかしくない」状況を各自治体が認識し、常にオーバーツーリズムが起きうることを前提にする必要がある。一律的な特効薬もない中で、「オーバーツーリズムや問題が起きることをシミュレーションし、一定の対策を想定しておくことが欠かせない」と高坂氏は助言する。(平尾孝)
◇
富士山ローソン SNSで紹介されたことで、「ローソン河口湖駅前店」は2年ほど前から富士山ローソンとして外国人観光客の人気撮影スポットとなっている。富士急行線の河口湖駅から近く、周囲では常時数十人が撮影していた。コンビニの駐車場やその前の歩道でも撮影できるが、道路を隔てた向かいの歯科医院前からの方がアングルがいいと人気があり、撮影者が殺到。ごみのポイ捨て、通院者向けの駐車場への無断駐車などのマナー違反に加え、自動車やバスが行き来する道路の、横断歩道ではない場所を渡るなどの危険行為が相次いだことから、富士河口湖町が歯科医院前の歩道に高さ2・5メートル、幅20メートルの目隠し幕を設置するなど、異例のオーバーツーリズム対策を実施した。