NASAの小惑星衝突実験で生じたデブリ、地球に到達するかも
人類初の試みの余波。 2022年9月、NASAのDART(二重小惑星進路変更実験)は小惑星に高速で動く探査機を体当たりさせ、その軌道を変えられると実証することに成功しました。このDARTミッションのターゲットで直径約160mの小惑星「ディモルフォス」は本当の脅威ではありませんでしたが、この技術がゆくゆくは地球防衛の手段となるかもしれません。 そんなディモルフォスからのデブリが、地球に“一矢報いる”かもしれないと示唆するフォローアップ調査の結果が明らかになりました。研究チームによると、衝突で生じた噴出物は10年以内に地球に届く可能性があるものの、危険をもたらすわけではないようです。 現在プレプリント・サーバーarXivで公開されている彼らの論文は、学術誌The Planetary Science Journalに掲載される予定です。
DARTミッションの意義
DARTミッションがとても重要だったのは、地上の覇権を握っていた恐竜を絶滅させた約6600万年前の隕石のような存亡にかかわる脅威からわが身を守る手段を、人類が実際に持っていると示せたからです。プラネタリーディフェンスにおけるこの目覚ましい成果は、昨年の米Gizmodoの特集でも取り上げられました。
衝突で生じた破片の行く末をシミュレーションしてみた
今回の調査では、DARTがディモルフォスに衝突する様子を間近で観測していた、小惑星撮影用のイタリアの軽量キューブサット「LICIACube」が収集したデータが調べられました。このデータはその後、小惑星からのデブリ(塵と岩石のこと)がどう宇宙空間へ散らばったのかシミュレートするため、NASAのNavigation and Ancillary Information Facility(NAIF)にあるスーパーコンピューターに取り込まれることに。そのシミュレーションでは衝突によって巻き上がった約300万もの粒子を追跡し、なかには地球で観測できる流星を生成するほど大きな粒子もあったとのこと。 衝突からの粒子は火星に7~13年ほどで到達でき、最も速い粒子はたった7年で月ー地球系まで届くそう。 この詳細なデータは、DARTで生じた流星の判別に役立ち、研究者たちは衝突に関わる現象を正確に解析して解釈できるようになります。 と論文に書かれていました。 2年近く前にDARTがディモルフォスにぶつかった直後、その近傍では40個弱の岩塊が観測されていました。同ミッションはディモルフォスの位置を数十mそらし、今後の潜在的に危険な小惑星からの被害を軽減するには同様のアプローチを取ることができると示したのです。 地上の生命を脅かす小惑星は今のところ(私たちが知る限りでは)ないものの、宇宙機関が定期的に最悪の事態を想定したシミュレーションを実施するぐらいには現実的な脅威となっています。 しかし今回の研究が示すように、小惑星の軌道変更だけでは不十分なのかもしれません。進路を変えることはできても、その破片がそこら中に散らばるかもしれないですからね。 Source: arXiv,
たもり