「富士山が噴火しても東京には影響ない」は本当か…何度も起きた「不気味な動き」の正体
2024年1月1日、能登半島地震が発生した。大地震はいつ襲ってくるかわからないから恐ろしいということを多くの人が実感した出来事だった。昨年には南海トラフ「巨大地震注意」が発表され、大災害への危機感が増している。 【写真】日本人が青ざめる…突然命を奪う大災害「最悪すぎるシミュレーション」 もはや誰もが大地震から逃れられない時代、ベストセラーの話題書『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれ、また、防災に必要なデータ・対策が1冊にまとまっている。 (※本記事は宮地美陽子『首都防衛』から抜粋・編集したものです)
なぜ「首都防衛」なのか
本書のタイトルに『首都防衛』と用いたのには理由がある。 「防衛」と言えば、他国からの攻撃やテロなどから祖国、そして国民の生命を守ることを思い浮かべるだろう。 だが、国家や国民を脅威から「防ぎ守ること」に主眼を置くならば、首都直下地震や南海トラフ巨大地震、富士山噴火といった巨大災害に対しては「防衛」という言葉を用いるのがふさわしいだろう。 実際、我が国の「防衛力整備計画」(2022年策定)には、防衛力の果たすべき役割として「大規模災害等への対応」を掲げ、自衛隊が災害派遣を迅速に行うための初動対処態勢を整えていることや、震度5強以上の地震が発生した場合は航空機による情報収集を実施していることなどが記載されている。 国家の存立が危ぶまれるような事態とはいかないまでも、我が国の中枢機能が集中する首都が未曽有の自然災害によって危機に陥れば、国家の機能や力は大きく失われる。 首都直下地震や南海トラフ巨大地震という二つの巨大災害に見舞われ、東と西がほぼ同時に大打撃を受けることがあれば、それは「有事」そのものと言えるだろう。 私が新聞記者として山梨県に赴任した2000年、300年近くも眠り続ける日本最高峰は不気味な動きを見せた。富士山は「活火山」であると主張するように地下15キロ付近で低周波地震を急増させたのだ。 翌2001年に国と富士山周辺の8自治体は「富士山火山防災協議会」を設立し、初めて国レベルのハザードマップづくりが開始されるようになったが、観光振興と危機感の醸成を同時に進めることには難しさもある。 登山者からは「富士山が噴火?そんなことは自分が生きている間にないでしょ」「噴火しても東京には影響ないよ」といった声も聞こえた。 だが、本当にそうなのか。ましてや、首都直下地震や南海トラフ巨大地震との「大連動」が生じれば、我が国には地球上で経験したことがないような悲劇が起こり得る。 加えて、激甚化する風水害や隣国からの弾道ミサイル発射も脅威だ。複合災害の襲来だけでなく、台湾海峡や尖閣諸島の緊張も日本には存在する。 私が『首都防衛』を執筆する理由は、まさにその点にある。我が国を取り巻く環境をにらめば、もはや国家や国民を守り抜くことに直結する「首都の防衛」をどうするのか、少しでも被害を軽減するために国民には何が求められているのかを考えるべきタイミングを迎えていると言えるだろう。 私は、東京都知事政務担当特別秘書として都庁内の会議や意見を聞くとともに、災害や防災の専門家、被災者から話を聞いてきた。『首都防衛』は、今を生きる人々だけでなく、後世に残したい対策の必要性と大切な人の命を守ってほしいという私の思いを詰め込んだ一冊である。 つづく「『まさか死んでないよな…』ある日突然、日本人を襲う大災害『最悪のシミュレーション』」では、日本でかなりの確率で起こり得る「恐怖の大連動」の全容を具体的なケース・シミュレーションで描き出している。
宮地 美陽子(東京都知事政務担当特別秘書)