トランプ氏「犬猫を食べる移民」発言を撤回せず ニューヨークZ世代が強く非難「明らかにファシズムのやり方」
◆移民との共存が経済発展の礎となる
Z世代専門家のシェリーは討論会の1週間後、ニューヨーク郊外でおこなわれたトランプ氏の支持者集会を取材。結果、1時間半のスピーチのほとんどが移民問題についてでした。 トランプ氏は、オハイオの話は氷山の一角で、こうした問題が全米で起こっていると主張しています。「ある街では女性が移民にナタで切り付けられて大怪我をした」「ベネズエラの犯罪率が7割も下がったのは、大勢の犯罪者をアメリカに送り込んだから」などと、ありもしない嘘を並べ、こうした移民が我々の職や住む場所を奪っていると主張し続けているのです。 トランプ氏が「ハリスでは移民がアメリカを破壊してしまう。自分は彼らを大量に強制送還し、アメリカを取り戻す」と発言すると、支持者からは嵐のような拍手喝采だったとシェリーは支持者集会を振り返ります。こうした論理に対し、ラボのZ世代が強く反論します。 メアリー:移民が私たちの経済に打撃を与えているという主張があるけど、それってたった1つの研究に基づいているんだよね。基本的に、移民が学校に通うなどして社会サービスに負担をかけているという内容なんだ。移民が犯罪を犯すというけれど、移民による殺人事件は1年にたったの36件ぐらいしか起きていない。 シェリー:アメリカでは毎年2万人近い殺人が起きているからね。 メアリー:だから、私たちは一体何を議論しているんだろうって感じ。 ノエ:それは明らかにファシズムのやり方だね。ドイツがうまくいかないのはユダヤ人のせいだとか、アメリカがうまくいかないのは黒人のせいだとか。 この前Instagramか何かで見たんだけど、誰かが言っていたんだ。「ファシストたちに投票するとき、有権者が期待するのは移民を締め出して、真のアメリカ人、つまり白人の仕事を増やすことだ」ってね。しかし現実は、どのファシスト政治家も実際に国境を閉鎖しようとはしないんだ。こういう人たちが勝っても、結局は移民が流入するってこと。 1つ違うのは、その人たちは市民権をもらえず、出稼ぎ労働者として安い賃金で使われるっていうこと。というのも、欧米やグローバル・ノース(グローバル化の恩恵を受け経済的な発展を遂げている先進国)と呼ばれるような国のすべてが、移民労働力なしでは絶対にやっていけないから。 チポトレ(アメリカで人気のファストフードチェーン)やセブンイレブン、ガソリンスタンドなどで、白人が働いているのを見たことがないよ。移民が肉体労働の大部分を担っているという現状があるんだ。 移民が増えることで、学校などの社会サービスに負担がかかるのは事実です。しかしながら、移民が入ることで犯罪が増えるというのは誤りです。アメリカ市民に比べて、移民の犯罪率はずっと低いことが証明されています。 それ以上にアメリカは、不法移民も含め、移民を受け入れることで経済がまわっています。そのおかげでパンデミック後も、世界のどの国よりも早く経済復興を果たしました。 犬猫で有名になってしまったオハイオ州のスプリングフィールドは、企業誘致のために人手が必要だったため、ハイチ移民に特別な労働許可証を発行しました。それはつまり、移民が侵入したのではなく、誘致したという事実があります。誘致の結果、街の経済は潤うようになりました。 街はもとからいた市民と移民を分断・対立させるのではなく、共存しようと努力しています。「これこそが、多くが移民2世や3世でダイバーシティあふれるZ世代が描く、アメリカの未来図でもあります」とシェリーは発言します。 一方で、そうしたアクションに抵抗する人、特に白人以外が入ってくることを嫌がる白人が少なくないことも事実です。ちなみに、シェリーが取材したニューヨーク郊外のトランプ支持者集会も、9割以上が白人でした。 こうした移民排斥のレトリックは、歴史的にファシストが使ってきたことも事実です。ヒトラーのユダヤ人大量虐殺も、そもそも「ユダヤ人がドイツ人の職を奪って国を乗っ取ろうとしている」というメッセージが響いたからです。 現在、ヨーロッパにも移民が溢れ、フランスでファシスト的な極右の党が躍進して、不安定で危険な状態です。違う文化が混じり合うとき、どうしても軋轢が発生します。「日本もこうした移民問題が、これから大きくなってくでしょう。そのとき、こうした世界的な文脈で考えることが、とても重要になっていくと思います」とシェリーは話し、話題を締めくくりました。 (interfm「NY Future Lab」2024年9月25日(水)放送より)