かかりつけ獣医が専門医の治療を勧める5つの病気 愛犬・愛猫に最適な診療を選ぶには
獣医師が専門医の治療をすすめる犬猫の病気
私が院長を務める田園調布動物病院は、かかりつけの動物病院です。人のクリニックと同じように問診・聴診・触診を基本とし、必要なときにレントゲンや超音波検査を行い、幅広い動物の傷病の治療を行っています。 犬猫の傷病の場合、当院の設備や自分の能力で治せなければ専門医へのセカンドオピニオンをすすめています。別の獣医師の意見を求めるだけでなく、私が「この専門医なら治せる可能性がある」と思った場合や、飼い主さんが納得するための説明が必要だと思ったときに紹介するわけです。 飼い主さんからは、専門医への紹介を言い出しづらいかもしれませんが、セカンドオピニオンを相談されて怒るような器の小さい獣医師はいないはずです。人の医療ではホームドクターから大学病院への紹介がごく当たり前に行われていますよね。犬猫のためによりよい医療を模索するためにも、遠慮なく相談してほしいと思っています。 【田向先生が紹介する5つの専門診療科】 整形外科 膝蓋骨(しつがいこつ)脱臼(パテラ脱臼)や前十字靱帯(じんたい)断裂などの手術には設備的、技術的に対応できないので紹介する。 神経内科 てんかんなどの脳の問題や椎間板(ついかんばん)ヘルニアなどの病気が疑われる場合、神経はレントゲンや超音波には写らないためCTやMRIなどの設備のある動物病院をすすめる。 腫瘍科 腫瘍(しゅよう/がん)に用いる高価な抗がん剤をそろえ、日進月歩の速さに合わせてアップデートを続けている専門診療科の獣医師が治療したほうが治る可能性がある。 眼科 白内障や緑内障の手術には設備的、技術的に対応できないので紹介する。 皮膚科 アトピー性皮膚炎やアレルギーの治療、検査、スキンケアなどについて、より詳しい説明や追加の処置が必要と判断した場合に紹介する。
飼い主が専門医の治療を希望する犬猫の病気
私が紹介したほうがいいと判断する5つの専門診療科とは別に、犬猫の飼い主さんからセカンドオピニオンを希望されることもあります。基本的に下記の5つの専門診療科や病気の場合は、飼い主さんの要望に応えて紹介しています。かかりつけの動物病院で対応できる病気が多いものの、病態を正しく知るために専門医を受診するのも一案です。 【飼い主が紹介を希望する5つの専門診療科】 歯科 健康維持のためのメンテナンスや歯周病などの病気の治療は、歯科専門の獣医師の技術に頼ったほうがよい結果になるかもしれない。 循環器科 僧帽弁閉鎖不全症などの心臓病は投薬で進行を遅らせる治療法が一般的だが、手術ができる動物病院もある。 内分泌内科 糖尿病は命に別条がない範囲に体調を維持することはかかりつけ医でも十分可能。ただし、血糖値そのものを厳密にコントロールしたい、もしくは病気をより詳しく知りたいと思う飼い主には専門医が必要になる。 呼吸器内科 トイ・プードルやチワワなどの小型犬に多い気管虚脱の手術を飼い主が希望する場合は紹介する。 消化器内科 下痢は血液検査では異常が数値化されないため、確定診断を出すには内視鏡検査で腸の粘膜を採取する生体検査が必要になる。たとえば原因不明の下痢が長期間続く場合は、専門医を受診したほうが確定診断と適切な治療につながる。
動物医療は犬猫と飼い主の幸せのために
犬猫が命を危うくする病気になったときに、よりよい治療が受けられる可能性があるなら専門診療科で診察を受けたほうがいいでしょう。専門医はその名のとおり特定の病気や部位を専門に診るので、犬猫をよく知るかかりつけ医との連携が望ましいですね。かかりつけ医と専門医で検査結果や治療経過を共有しながら治療を進めることができます。 ただし、病気の完治や改善と引き換えに、遠方への通院や高額な医療費が必要になることも。病気ばかり追いかけるのではなく、愛犬・愛猫と飼い主さんが幸せになれるかどうかということも考えてほしいと思っています。